• ホーム
  • 県立病院機構について
  • 入札情報
  • 情報提供
  • 採用情報

ホーム > 県立病院機構について > 理事長挨拶 > 理事長コラム > 「平成22年度海外医療視察D研修団報告(キューバ)~驚きのキューバ医療:Family Doctorが立役者~」(全国自治体病院協議会雑誌2011年4月号掲載)

ここから本文です。

最終更新日:2011年7月5日

(全国自治体病院協議会雑誌2011年4月号掲載) 

平成22年度海外医療視察D研修団報告(キューバ)          ~驚きのキューバ医療:Family Doctorが立役者~

  

キューバ海外医療視察団 団長  神原 啓文

(静岡県立病院機構理事長兼静岡県立総合病院院長)

                           

 キューバは、遠い国、カストロ議長が率いる社会主義国、カリブ海に浮かぶ島国の一つ、2010年1月の大地震に見舞われたハイチの隣国、あるいは映画「シッコ」で取り上げられた国民に優しい医療体制を持つ国、その程度の認識しかありませんでした。今回、全自病によるキューバ医療の視察ツアーを見た副院長に促され、私の病院からの3名と他病院の方々5名、添乗員1名の団で出かけました。キューバはアメリカと国交がありませんので、ヒューストンからメキシコを経由して翌日到着です。

 

 

 (図1ハバナ旧市街(世界遺産)の一風景(図1)ハバナ旧市街地(世界遺産)の一風景 

 キューバの人口は日本の1/10、面積は約1/3、一人当たりのGDPは日本の約1/8、アメリカの1/20です。人口密度が低いので、日本に比べ道が広く、民家はブロック造り風の古い建物が多く、また60-70年前にアメリカを風靡したold fashion carを改造した自家用車やタクシーが登場、時には馬車まで見られ、半世紀前にタイムスプリットした様でした。公共輸送は不十分で通勤でもヒッチハイクが盛んです。旧市街はスペイン領時代に作られた建造物が保たれ、世界遺産です(図1)。古くても、ゴミは見られず、ハエや蚊もいないようで、環境衛生への配慮が伺われました。大学を含め教育と医療は無料(薬剤は有料であるが廉価、医師の処方箋が必要)で提供され、土地は国有、食糧など最低の生活必需品は配給で保障されているためスラムがなく、治安は大変良とのこと。電気代は高く、街灯は少なく、節電に努めており、病院の待合室も暗い。節約運動は徹底しているようで、ペーパーも不足のため、カルテも裏紙を使用していた。

  cuba2

(図2)診療所の外観                 

さて、医療情勢であるが、日本の数分の1の医療費で米国に優る乳児死亡率、先進国並みの平均寿命(78歳)で、高齢化社会(2025年には人口の4分の1が60歳以上)が目前とのことだった。医療は全国に張り巡らされたプライマリーケア・ネットでカバーされている。1次レベルの医療は全国に3万以上配置されている診療所とポリクリニコが担う。住民400~1200人に対して一箇所の診療所(2階にfamily doctorが居住、診察室には聴診器と血圧計位しかない)があり(図2,3)、さらに診療所20-30を束ねるポリクリニコ(総合診療所)(図4,5)が全国に約500ある。2次レベルの医療は市・県病院(約220施設)で提供され、さらに3次レベルの医療は13の国立病院(図6)で行われる。急病は24時間受け付け、フリーアクセスである。医療費は国家予算の14%程度、医療と福祉が国家予算の約1/4を占めるという。     cuba3                    

 

 (図3)診療所内の診察室  (巡回に来ていた産婦人科医)      

                                         

    医科大学は全国に24校あり、毎年4,000人の医師が誕生、2009年に75,000人の医師がおり、人口10万当たり666人と世界一多い。医師の養成は、1~3次の各レベルで行われており、日本に比べて臨床実習に重点が置かれている。医師の半数がfamily doctor、6割が女性、専門医になりたい医師は選抜されて学ぶことが出来るが、その数は規制されている。cuba4      

 (図4)ポリクリニコの外観

                                                                        

  中南米の医療レベルを向上する目的で1999年「ラテンアメリカ医科大学」(図7)が設立され、これまで74ヵ国から1.2万人が学び、現在も4,000人が在籍している。しかも、全ての教育・生活費は無料のみならず、毎月100ペソの奨学金まで給付している。卒後は自国戻り、無医村で働くことが条件になっている。医師の海外派遣・支援も積極的に行われており、「ヘンリー・リーブ国際救助隊」が2005年に創設され、2009年までに39,000人が78ヶ国で働いた。さらに、2005年からラテンアメリカの人々400万人に白内障手術を行うという「奇跡の計画」をスタート、すでに180万人に手術を施行したという。                                                                                                   

 

                                         cuba5(図5)ポリクリニコでの診察   

 

  

 

 

 

 

 

  しかし、アメリカの経済封鎖は継続しており、米国からの医療器材の導入が出来ないため、情報の収集と活用のため、主要関係機関をPCネット(Linux)で結び、情報分析や遠隔医療、医療電子図書、医療トレーニングセンター、さらにはバーチャル大学で活用しているという。機器や薬剤の開発にも積極的に取り組み、「世界を救う」というビジョンの下にバイオテクノロジーに力を入れている。医薬品は15%を輸入、85%は材料を輸入し国内で900種類弱の薬剤を製造しているそうだ。ワクチンなどの開発を急速に進め、すでに多くの国に輸出するまでになっており、獲得外貨の1割、医療関連全体では5割近くを占めるという。B型脳髄膜炎のワクチン製造はキューバが世界初、インターフェロンの工業化にも成功。医療費抑制の最重要課題はプライマリーケアと予防医学で、ワクチン接種は徹底している。小児麻痺、マラリア、ジフテリア、ポリオなどは一掃され、エイズ予防も積極的に進めている。結核による死亡、寄生虫もほぼ無くなっている。ポリクリニコでは、リハビリテーションや代替医療(針灸・指圧や日本の自然食)の導入も盛んである。キューバの疾病構造は先進国と同様で、死因数は心臓病、悪性腫瘍、脳卒中の順で、最近は若者の喫煙、飲酒、肥満が問題にされている。

(図6)アルメヒラス病院の外観

cuba6                           cuba7

                                                                                                   (図7)ラテンアメリカ医科大学学長と訪問団一行 

 まとめ

 予防医学とプライマリーケアに注力し、限られた医療費の中で先進国に勝るとも劣らない医療成績をあげ、地域医療を維持することに成功していることは目を見張るばかりである。また、医師の臨床教育を低コストで行い、人口当たり世界一の医師数を擁し、さらに医師団による海外支援を積極的に行っている。その意欲と教育・医療体制はわが国の医療界や政府関係者にとっても大いに参考になると申し上げたい。

                                             

お問い合わせ

部署名:経営管理課

電話:054-200-1610

ファックス:054-247-1021

  • 医師募集
  • 研修医募集
  • 看護師募集
  • 県立病院がめざす病院像
  • 理事長コラム