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糖尿病・内分泌内科:診察Q&A

最終更新日:2014年12月4日

静岡新聞の診療室に掲載されたもので、本院の医師が回答したものです。医師の肩書等は新聞掲載当時のものです。


問1 バセドー病で筋力落ちる

34歳の男性。昨夏の終わりごろから手のふるえを感じ、バセドー病と診断されました。薬で治療を始めましたが、最近筋力がとても落ちてきているようです。手のふるえはなくなりました。最前の治療法を教えてください。食事などの注意点はありますか。

答:心身の安静、根気良く…(1996年4月19日 内科医長 井上 達秀)

バセドー病は、自己免疫疾患の一つであって、甲状腺(せん)に対する自己抗体が甲状腺を刺激してホルモン分泌が亢進(こうしん)する病気です。成因には遺伝的な因子も関与しますが、自己抗体が出現する詳細な機序は不明です。質問者のようにバセドー病の患者さんは暑さに弱いため夏になると症状が増悪し、外来を受診することが多くなります。
自覚症状には、精神の不安定、心悸(しんき)亢進、頻脈、多汗、指のふるえなどの甲状腺中毒症状と眼球突出などの眼症状があります。また、質問者のように筋力低下や関節痛を訴えることもあります。やせて脂ぎった肌も特徴ですが、体重の減少は、筋肉などの細胞成分の減少であることが分かっています。ただし、甲状腺機能の正常化に伴い筋力は回復します。
体はだるいが、何かしないではいられないというのもバセドー病の特徴ですが、自覚症状のあるうちは、心身の安静を心掛けるべきです。食事の内容についてはあまり神経質になる必要はありませんが、カロリー消費が激しいので栄養のあるものを十分とるようにしてください。甲状腺ホルモンの材料になるヨード含量の多い海草類も食べ過ぎなければ支障ありません。
治療法には、薬物療法、放射性ヨード療法、外科療法があり、それぞれに長所、短所があります。さらに、年齢、性別、甲状腺種の大きさなどにより最適な治療法が異なりますので、専門医とよく相談の上決定してください。いずれにしても、バセドー病は経過の長い病気ですから、根気よく治療しましょう。

問2 腹部がかなり出ている29歳女性

29歳の独身女性。身長160センチ、体重53キロで脂肪率、肥満度とも正常範囲内ですが、腹部だけがかなり出ています。原因を調べて適切な助言をしてくれる医療機関を教えてください。

答:肥満度は正常、消化器内科受けて…(1997年7月14日 内科医長 井上 達秀)

質問者のBMI(肥満度の指標=体重キロ/身長メートルの2乗)は、20.7と正常範囲にあり、かつ、脂肪率も正常ということですから、肥満という観点からは問題ないと考えられます。
おなかが出ているという症状は、腹部膨隆と表現しますが、腹壁が膨らみ出した状態をいい、全体的なものと局所的なものがあります。
全体的な膨隆には鼓腸、腹水、肥満などがあります。鼓腸とは腹部に異常にガスの集積した状態であり、腸管内ガスの生成と排せつのバランスが崩れて生じますが、さまざまな疾患、病態が原因となります。腹水は重篤な疾患に伴うことが多いこと、おなかの中に脂肪のたまる内臓脂肪症候群は男性に多いことから、質問者の場合考慮しなくてもよさそうです。
局所的なものには、各種臓器の腫瘤(しゅりゅう)やのう胞などがあります。胃、膵(すい)、腎(じん)はもちろん、質問者は女性ですから、卵巣、子宮の病変を除外する必要があります。いずれにしても、消化器内科を受診されることを勧めます。

問3 バセドー病で服薬、妊娠望む

28歳の主婦。バセドー病で通院中で、メルカゾール錠を服薬しています。子供が欲しいのですが、薬による影響や、産後の体調が心配です。

答:胎盤移行少ない薬に変えて…(1997年12月18日 内科医長 井上 達秀)

バセドー病の薬物療法で使用されるものには、チウラジールなどのPTUとメルカゾール(MMl)があり、両者の間には、作用機序、血中半減期、作用持続時間などに若干の相違があります。わが国では、より強力で効果発現の早いMMlの方が好んで使用されるようですが、質問者のような妊娠希望者に対しては、胎盤移行性の少ないPTUの使用が勧められます。また、PTUはMMlと比較して乳汁排せつも少なく、授乳時に内服しても乳児への影響を心配する必要がありません。
質問者は、MMl毎日一錠内服によって現在、甲状腺(せん)機能は正常にコントロールされていますから、いつ妊娠してもいい状態です。したがって、早めにPTUに変更することによって胎児の甲状腺機能を正常に保つことで、胎児の発育や妊娠経過を良好なものとするとともに、赤ちゃんが誕生した後も授乳を介して充分なスキンシップを図ることが可能となります。
分娩(ぶんべん)を機に甲状腺機能に異常をきたすことがあります。ことに、産後半年くらいによく見られ、バセドー病の悪化のこともあれば、一過性の異常のこともありますので、必ず定期的に受診しましょう。

問4 甲状腺内部に嚢胞状の腫瘍

27歳の女性。右の甲状腺(せん)が腫れたため、受診してエコーで診てもらったところ、腫瘍(しゅよう)がつぶれて嚢(のう)胞になったものだと言われました。今は切らずに甲状腺ホルモン剤を6ヵ月飲んで様子を見るということですが、この先、薬で小さくなるのでしょうか。どのような状態になったら切るべきで、傷跡はどの程度なのでしょうか。

答:増大ある場合は手術も考慮…(1995年8月28日 内科医長 井上 達秀)

右の甲状腺に内部の一部が嚢胞状になった腫瘍がある場合、まず、その腫瘍が良性であるのか、悪性であるのか診断しなければなりません。そのために、甲状腺エコー、シンチグラフィー、CTなどの画像検査とともに、細い針を腫瘍内に差し込み、陰圧をかけることで一部の腫瘍細胞を採取して調べる細胞診を行います。
質問者の場合は、良性の腫瘍と診断され、甲状腺ホルモン剤(T4)投与によるTSH抑制療法が開始されています。この治療法は、“TSHが腫瘍を増大させる”という仮設に基づいたものです。その効果は、腫瘍の種類により大きな相違があり、一概には言えませんが、2~4割で腫瘍のサイズが縮小したとする報告がある一方、有効でないとする報告もあります。
この治療法には、副作用として骨粗鬆(しょう)症や心血管系への悪影響があるため、T4の投与量、投与期間には慎重でなければなりません。また、女性の場合は、閉経前後で治療方針を変える必要があります。
質問者は27歳ですから、6~12ヵ月間TSH値を0.1μUミリリットル以下に抑制して、腫瘍のサイズを観察します。縮小がない場合はT4投与を中止します。
サイズの増大がある場合は、細胞診を繰り返し、場合によっては、手術します。皮膚切開の大きさは腫瘍のサイズによります。手術瘢痕(はんこん)は確かに残りますが、術後の患者さんの多くはネックレスをうまく利用されています。手術をするかどうかは大きな問題ですから、主治医、あるいは専門医とよく相談して決定すべきです。

問5 ももなどに妊娠線のような肉割れ

22歳の女性。身長153センチ、体重43キログラム。両足太ももに妊娠線のような肉吾があり(出産もしていないのに)、最近ふくらはぎの内側にもできてきました。進行を防ぎ、ケアする方法を教えて下さい。

答:線条を消すことは困難…(1998年10月6日 内科医長 井上 達秀)

妊娠線のような線条の皮膚の萎縮は皮膚線条といい、幅数ミリ、長さは時に10センチ移乗に及び、ほぼ直線状に走るはん痕(こん)性線条です。はじめは紅色で隆起し、のちに帯白色ちりめん皺様となり、わずかに陥凹します。肥満者の大腿や臀部によくみられますが、肥満していなくても思春期の体格のよい人でもみられます。女性では、このほかに乳房にもできることがあります。また妊娠6カ月以後の妊婦でよくみられます。
脂肪組織をはじめとする軟部組織が増大することにより、持続的に皮膚に張る力が働き、弾性線維が分離したり、欠如することにより生じます。真皮の断裂の上に薄い表皮が被った状態です。その他、ホルモンの異常によっても生じます。クッシング症候群や大量のステロイド投与時には膠原線維の産生が副腎皮質ホルモンにより抑制されるため、赤色の皮膚線条をきたします。
これらを防止するには、急速な体重の増加や肥満を避けること、また、副腎皮質ホルモン分泌に異常がないかどうか詳しく調べることが必要です。できてしまった線条を消すことは不可能ですが、形成外科的治療で小さくすることができるかもしれません。専門医を受診して、相談されることを勧めます。

問6 3年前に出産、いまだに乳汁分泌?

30歳1児の母。3年前に出産、母乳はほとんど出ずミルクで育てました。現在、生理は正しくあり、妊娠していないのに乳首をつまむと乳汁のような分泌物が出ます。出産前に受診したとき「プロラクチンが高い」と言われました。ホルモンのバランスなど何か関係あるのでしょうか。

答:内分泌の専門医を受診して…(2000年1月26日 内科医長 井上 達秀)

授乳期以外の時期に乳汁が分泌される場合を乳汁漏出症と呼びます。女性に乳汁漏出が起こると高率に無月経を合併するので、この病態を一括して乳汁漏出、無月経症候群といいますが、質問者の生理は順調であり、産後も母乳栄養でなかったので早く月経が再来しています。
乳汁漏出、無月経症候群の原因は、プロラクチンの過剰分泌です。脳の真下にぶら下がっている下垂体という内分泌臓器から各種ホルモンが産出されるが、その異常症で最も多いのが高プロラクチン血症です。高プロラクチン血症の病因で最も重要なのはプロラクチノーマ(プロラクチン産生下垂体腺種=せんしゅ=)です。プロラクチノーマは下垂体腫瘍(しゅよう)の中で最も多く、全体の3分の1を占めます。薬剤による高プロラクチン血症も少なくなく、一般臨床の場でよく使用される胃腸薬が原因となることもあります。原因不明な機能性高プロラクチン血症も多いです。高プロラクチン血症の女性の約70%に乳汁漏出が起こり、約90%に無月経が現れます。
経過予後は基礎疾患により異なりさまざまです。基礎疾患を明らかにした上で、治療として薬物療法か、手術療法が選択されますが、実際には腫瘍サイズ縮小効果を合わせ持つことにより、薬物が治療の第一選択になることが多いです。いずれにせよ内分泌の専門医を受診されることを勧めます。

問7 直腸がん手術後、おならが出過ぎる

62歳の男性。3年前に直腸がんの手術をし、順調に回復、現在は2ヶ月に1度診断を受けています。排便は順調ですが、においが強いおならが絶えず出てしまうのが悩みです。抗腫剤カプセルや整腸剤、胃薬のほかに、糖尿病のためのベイスン、グリミクロンを服用しています。

答:糖尿病の薬が原因か…(2001年1月31日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

質問者は3年前に直腸がんのために開腹術を受けた後、現在に至るまで抗がん剤治療により順調に経過しています。直腸の切除は腸内細菌叢や消化吸収にはさほど影響しないのでおならの増加とは関係ありません。それに、腸の手術後におならが出ることは腸の運動が正常であることを意味しますから悪いことではありませんが、質問者の場合は、その量と回数が多すぎるのが問題です。
おならは、ガス産生能を持つ腸内細菌が増加した場合、あるいは、大量摂取した糖質が十分消化吸収されず大腸に達し、腸内細菌による発酵を受け、多量のガスが発生する場合に、腹部膨満とともに出現します。
ベイスンは、糖質の吸収を遅延させることで、食後過血糖を改善する薬であり、最近多くの糖尿病患者さんに処方されますが、投与開始後数ヶ月間は、腹部膨満、おならの増加が、数%の患者さんで認められます。したがって、開腹手術の既往、または、腸閉塞(へいそく)の既往のある患者さんには、腸内ガス等の増加により腸閉塞ようの症状が発現しやすいため、ベイスンは慎重に投与しなければなりません。質問者の場合は、糖尿病の主治医とよく相談し、糖質中心の食事を見直した上で、ベイスンの内服量を減量するか、一度中止してみることを勧めます。

問8 脳下垂体腺腫の手術後失明

53歳の男性。4年前に脳下垂体腺腫の手術を受けましたが、去年再発し、再手術を受けました。ところが手術後、右眼が失明、左眼は視野50月70日%となってしまいました。退院時の病名は脳下垂体機能低下となっています。眼はこれ以上回復しないでしょうか。病の進行を防ぐ方法はありませんか。

答:発育速く湿潤性の強い腫瘍…(2001年2月1日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

脳下垂体は、脳底の中心、視床下部よりぶら下がっている約0.5グラムの小さな臓器ですが、生命維持に必要な各種ホルモンを産生しており大変重要な働きをしています。また、その上方に視神経が走行しているため下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ上方に進展して視神経を圧迫すると視力低下や視野異常を合併します。
質問者の場合はホルモン産生能のない非機能性の腺腫(せんしゅ)に対して経蝶形骨洞腺腫摘出術が施行されたようです。3年後にサイズが増大した残存腫瘍に対して2回目の手術(術式不明)が行われましたが、術後、右眼失明、左眼視野障害の後遺症をきたし、生活の質が大変悪化しています。さらに、正常な下垂体の機能も損なわれ、下垂体機能低下症と診断されてホルモン補充療法を受けているようです。発育が速く浸潤性の強い腫瘍の場合、このような経過もあります。
腫瘍の増大を防止するには、外科療法以外に薬物療法、γナイフ療法がありますが、腫瘍の薬物に対する反応性、腫瘍のサイズと視神経、血管との位置関係などが治療法の選択に影響しますから、ぜひ、内分泌の専門医と相談されることを勧めます。

問9 糖尿病で血糖値下がらず合併症が心配

58歳の男性。15年前に糖尿病と診断され、食事療法と運動で症状は落ち着いていましたが、最近食後の血糖値などが上がり、手足の先がピリピリしびれるので神経の薬も服用しています。しびれは落ち着きましたが血糖値が下がらず、合併症が心配です。インスリン注射をしたほうがいいですか。

答:個人により違う目標値 最適な治療法相談して…(2002年7月4日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

2型糖尿病の自然歴を知っておくことが重要です。2型糖尿病の発症、進展には、遺伝因子と環境因子の両者が関与しています。前者には、複数の遺伝子が知られています。後者には、過栄養、運動不足、ストレスなどとともに、自ら修正不能な加齢も含まれていることから、糖尿病患者では、加齢により、インスリン分泌量が低下するとともにインスリンの働きも悪くなり、血糖値は漸増します。
従って、血糖コントロールを生涯良好に維持するには、正しい生活習慣(食事、運動療法)を身につけるとともに、その時々の病態に応じた薬物療法が必要になります。血糖コントロールの目標は、年齢、病態によって患者さんごとに違いますが、多くの患者さんではHbA1c 6.5%未満であり、このレベルを維持すれば、合併症(最小血管障害、動脈硬化症)の発症、進展を阻止できます。
目標達成のために、各種経口血糖降下薬、インスリン製剤などを、患者個人個人に応じて選択使用されます。また、作用機序の異なる薬を併用することもあります。相談者の場合も目標達成のために最適な治療法は何か、主治医とよく相談してみてください。

問10 インスリン歴5年、精子に影響は

35歳の男性。5年前からインスリンを打っています。子どもがほしいので、このまま続けていいか迷っています。胎児に影響はありますか。どのようなことに注意すればいいですか。

答:安心して使い血糖管理に努めて…(2013年5月30日 診療支援部長、糖尿病・内分泌内科主任医長 井上 達秀)

糖尿病管理におけるインスリン療法のメリットは、
  1. インスリン分泌が枯渇している場合は絶対適応である。
    枯渇していない場合でも、早期にインスリン療法を開始するメリットが明らかになっている。
  2. 確実な血糖低下作用が期待できる
  3. 臨床的な使用経験やデータが豊富にある。合併症発症抑制に対するエビデンス(根拠)がある

以上が挙げられます。さらに、未知の副作用がほとんどなく、多くのインスリン製剤は妊娠時にも使用可能です。
すべての薬剤は生殖発生毒性試験をパスしています。インスリンはラットの精子運動性、精子数、精子正常形態率に影響しません。交配能、生殖能もしくは胚・胎児の生存または発育に影響しません。ヒトでも男女を問わずインスリンは安全な薬です。
一方、男性糖尿病患者の高血糖は精子のDNA損傷をきたし生殖能力を低下させますが、インスリンで治療すると生殖能力が回復することが知られています。
要約すると、インスリン療法が妊娠、胎児の発育に影響することはありません。悪い影響を与えるのは、不良な血糖コントロールです。主治医と共に良好な血糖管理の達成と維持に努めて下さい。