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消化器内科:診察Q&A

最終更新日:2014年12月4日

静岡新聞の診療室に掲載されたもので、本院の医師が回答したものです。医師の肩書等は新聞掲載当時のものです。


問1 手指の内側の血管がよく切れる

46歳の主婦。最近、手指の内側の血管がよく切れ、内出血しています。台所で食器洗いをしている時がほとんどです。力を入れ過ぎているのでしょうか。急にその部分が痛くなり、よく見ると血管が少し盛り上がって内出血していたりします。その後何分間も強い痛みがあります。毎年、一般の健診では異常ありませんが、脳出血など何か重い病気の前兆なのでしょうか。

答:念のためスクリーニング検査を…(1996年8月6日 第1診療部長 塩村 惟彦)

指の関節部の手掌側の皮下出血と思われます。この部分に出血が起こると強い痛みを伴うことがあります。出血しやすい病的な状態(出血傾向)は、血小板の数や機能の異常、血液中の凝固因子の異常、あるいは何らかの血管の異常などによって生じます。また年齢による影響は血小板や凝固因子に対してはあまりありませんが、血管は年齢とともに柔軟性を失う傾向があり、皮下出血は起こりやすくなります。
しかし、お手紙の内容からはこれらの異常は考えなくてもいいように思われます。健康な人でも強い打撲などで皮下の血管が損傷すると皮下出血を生じます。特に骨が体表に近い部位ほど皮下組織には強い圧力が加わり、血管は損傷を受けやすく皮下出血を生じやすいことになります。やせている人では、よりその傾向が強く出ます。手指の関節部の手掌側も薄い皮下組織の浅いところを血管が走っています。
この方の場合は、皿を強く洗うときに指の関節の特定の部分に強い力が加わって、血管の損傷を生じて出血すると考えられます。
念のため、一度病院で血小板や凝固因子などに関連するスクリーニング検査を受けてみて下さい。その結果異常がなければ問題はなく、とくに脳の血管からの出血の心配は全くいりません。

問2 8年前から全身性エリテマトーデス

35歳の主婦。8年前全身性エリテマトーデスになり通院を始め定期的に血液検査を受け、服薬しています。2年前から、だるさ、肩凝り、頭痛、胃潰瘍(かいよう)などになり気分がすぐれません。他の病気なのでしょうか。

答:病気をよく理解し現状の把握を…(1996年7月9日 内科医長 島田 秀人)

ご質問の患者さんは、既に8年もこの病気と付き合っているのですから、随分ベテランです。病気の状態も良い時・悪い時を経験されていると想像します。気を悪くされては申し訳ないのですが、ベテランにしては自分の病気を説明する要点がつかめていません。要するに、「病気が分からない」ので不安だけが残る結果になっているようです。
病気の解説が、ご質問の患者さんに本当に役に立つかどうか少し迷います。そこで、今回は症状の羅列的な解説はやめて、私たちがなにを目標に病気の状態を推し量っているかをお話しする方がよいと思います。
まず、定期的な血液検査では、補体・赤沈抗DNA抗体などが測定されているはずです。腎臓の具合はどうですか。尿も時々見ていますか。それに基づいて、ステロイドホルモンを中心としたお薬が増減されているはずです。今、どんな数字になってどれほどのお薬を飲んでいるのでしょうか。病気を治すときに使う量のお薬と、再発させないように維持するお薬の量は随分違います。
また、お薬の副作用を聞いていますか。ステロイドホルモンは、胃潰瘍や感染を起こしやすくさせるので注意が必要です。肺炎だってこじれることがあります。ただ、副作用を怖がって病気を治すことを怠ると、結果はもっと悪いものになるのでよく相談してください。
この病気は「全身性」の名が示すように、いろいろな臓器に病気を起こします。胸には間質性肺炎や胸膜炎などという症状もあります。また、まれには神経の変化を起こして、神経症状も出ることがあります。羅列すればまだまだあり、どれもこれも自分に当てはまるような気がしてしまうでしょう。
最も避けたいことは、心配しなくて良い毎日の身体の調子と病気の状態を混同してしまうことです。そのためには病気をよく知って、現在の病気の状態を自分でも判断できなくてはなりません。主治医の先生と十分話し合ってください。

問3 再発繰り返す口唇ヘルペス

52歳の女性。10年前から口唇ヘルペスができ始め、最近では年に3回ほどできます。今年3月にできた時は非常にひどく、鼻の下から口までべっとりとできました。4月に入りやっとかさぶたが取れてきた時に1歳3ヶ月のアトピー性皮膚炎の孫を預かりました。その後、息子から、首だけだった孫のアトピーが耳まで広がったと聞き、口唇ヘルペスが感染したのではと心配です。どうしたらよいのでしょう。

答:軟こう剤・経口剤が有効…(1996年7月24日 内科医長 島田 秀人)

口唇ヘルペスを起こすウイルスは、皮膚・粘膜から侵入して感染します。ウイルスが付着した物からも感染が起こり得ます。小児の場合は家族が感染源となることが多く、成人の場合は唾液・性行為によることが多いとされています。いったん感染すると、局所で増殖しますが、ウイルス血症で全身に回ることは少ないといわれています。
このウイルスが特別なのは、「潜伏感染」をして体の中に居続ける性質を持っていることです。口唇ヘルペスの場合は、顔に延びている神経の幹にあたる三叉(さんさ)神経節に潜んでいます。そして、機会があるとまた増殖し、病気を繰り返します。これを抑えているのがいわゆる「抵抗力」なのです。日焼け・ストレス・月経・発熱・外科手術・免疫抑制剤などの薬が抵抗力を弱める原因としてよく知られています。また、アトピー性皮膚炎の患者は皮膚の抵抗力が弱く、ヘルペス感染が重症化するため注意が必要です。
残念ながら、ご質問の患者さんはお孫さんに感染させてしまったようです。ただし、罪を感じたり、自分の体の抵抗力に不安を感じたりするのは間違いだと思います。
このウイルスに限らず、身の回りには無数の外敵がおり、私たちはそれとともに生きています。排除したり、逃げて回ったりすることはできません。口唇ヘルペスのウイルスは、日本ではほとんどの成人が既に感染しており、病気の兆候がなくてもウイルスを排泄(はいせつ)している健康人もかなり存在します。
それで普通に生きているのですから、まず特別な病気にかかったと思わないでください。わざわざ危険と承知のことをあえてする必要はないので、知識は生活の知恵程度に利用するのがよいと思います。
治療も最近は進んでおり、軟こう剤や経口剤が大変有効です。病初期に使用するとほぼ再発が防げるので、特に繰り返す人は自分で常備薬として持っていることも推奨されています。

問4 バセドー病で筋力落ちる

34歳の男性。昨夏の終わりごろから手のふるえを感じ、バセドー病と診断されました。薬で治療を始めましたが、最近筋力がとても落ちてきているようです。手のふるえはなくなりました。最前の治療法を教えてください。食事などの注意点はありますか。

答:心身の安静、根気良く…(1996年4月19日 内科医長 井上 達秀)

バセドー病は、自己免疫疾患の一つであって、甲状腺(せん)に対する自己抗体が甲状腺を刺激してホルモン分泌が亢進(こうしん)する病気です。成因には遺伝的な因子も関与しますが、自己抗体が出現する詳細な機序は不明です。質問者のようにバセドー病の患者さんは暑さに弱いため夏になると症状が増悪し、外来を受診することが多くなります。
自覚症状には、精神の不安定、心悸(しんき)亢進、頻脈、多汗、指のふるえなどの甲状腺中毒症状と眼球突出などの眼症状があります。また、質問者のように筋力低下や関節痛を訴えることもあります。やせて脂ぎった肌も特徴ですが、体重の減少は、筋肉などの細胞成分の減少であることが分かっています。ただし、甲状腺機能の正常化に伴い筋力は回復します。
体はだるいが、何かしないではいられないというのもバセドー病の特徴ですが、自覚症状のあるうちは、心身の安静を心掛けるべきです。食事の内容についてはあまり神経質になる必要はありませんが、カロリー消費が激しいので栄養のあるものを十分とるようにしてください。甲状腺ホルモンの材料になるヨード含量の多い海草類も食べ過ぎなければ支障ありません。
治療法には、薬物療法、放射性ヨード療法、外科療法があり、それぞれに長所、短所があります。さらに、年齢、性別、甲状腺種の大きさなどにより最適な治療法が異なりますので、専門医とよく相談の上決定してください。いずれにしても、バセドー病は経過の長い病気ですから、根気よく治療しましょう。

問5 腹部がかなり出ている29歳女性

29歳の独身女性。身長160センチ、体重53キロで脂肪率、肥満度とも正常範囲内ですが、腹部だけがかなり出ています。原因を調べて適切な助言をしてくれる医療機関を教えてください。

答:肥満度は正常、消化器内科受けて…(1997年7月14日 内科医長 井上 達秀)

質問者のBMI(肥満度の指標=体重キロ/身長メートルの2乗)は、20.7と正常範囲にあり、かつ、脂肪率も正常ということですから、肥満という観点からは問題ないと考えられます。
おなかが出ているという症状は、腹部膨隆と表現しますが、腹壁が膨らみ出した状態をいい、全体的なものと局所的なものがあります。
全体的な膨隆には鼓腸、腹水、肥満などがあります。鼓腸とは腹部に異常にガスの集積した状態であり、腸管内ガスの生成と排せつのバランスが崩れて生じますが、さまざまな疾患、病態が原因となります。腹水は重篤な疾患に伴うことが多いこと、おなかの中に脂肪のたまる内臓脂肪症候群は男性に多いことから、質問者の場合考慮しなくてもよさそうです。
局所的なものには、各種臓器の腫瘤(しゅりゅう)やのう胞などがあります。胃、膵(すい)、腎(じん)はもちろん、質問者は女性ですから、卵巣、子宮の病変を除外する必要があります。いずれにしても、消化器内科を受診されることを勧めます。

問6 高齢者の貧血の注意点は

70歳の男性。健康診断で4年前から貧血といわれていますが、投薬は受けていません。自覚症状もありませんが注意すべきことはありますか。

答:定期検査で経過見て…(1997年12月4日 第1診療部長 塩村 惟彦)

健康な成人男性の血色素(ヘモグロビン)の量は、血液100ミリリットル当たり約13グラム以上ですが、65歳以降では特に男性の場合これよりやや低くなる傾向があります。その原因はよく分かっていませんが、加齢に伴う造血能の生理的な低下のほか、貧血の原因となる疾患や異常が年齢とともに増えてくることが考えられます。
この方の年齢を考慮すると、貧血はあるとしてもごく軽度といえます。また3年間検査値にほとんど変化がなく安定していることから、現時点では大きな異常はないように思われますが、貧血の原因となりうる疾患の有無を一度検査しておくことは必要です。高齢者の軽い貧血では詳しく検査してもはっきりとした原因が見つからないことが多いので、その場合には従来通りの定期的な検査で経過を見てよいと思います。
腎臓(じんぞう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道のいずれかから出血のある場合、尿の潜血反応が陽性になります。泌尿器科、腎臓内科などでの精密検査をお勧めします。尿潜血が陽性でも顕微鏡検査で尿中に赤血球が認められないときには、赤血球の壊れやすい溶血性貧血やある種の筋肉の疾患が疑われますので、内科での精密検査が必要になります。

問7 膠原病と診断され不安

34歳の女性。4月に膠原(こうげん)病と診断され、抗価抗体が320倍でした。とても不安で、頭髪が抜けるのが気になります。何が原因でしょうか。そのうち治る病気ですか。現在貧血の治療中ですが、貧血と膠原病は関係ありますか。

答:“免疫”の理解が大切…(1997年12月9日 内科医長 島田 秀人)

膠原病の理解は、「免疫」を理解することで始まります。免疫とは、身体を外敵から守る仕組みです。敵と戦うには、まず敵と味方がはっきりしなくては始まりません。人の身体ではこの作業をリンパ球という白血球がしてくれます。次に「抗体」というラベルを敵に張り、攻撃目標とします。この仕組みは、大変精密です。
これほどの精密機械ですから、故障しない方が不思議で、敵と味方を見誤ることがあります。味方に間違ってつけたラベルを「自己抗体」と言います。抗核抗体(抗価抗体は誤り)は、間違って付けてしまった抗体の一種です。結果は自分の身体の一部をバイ菌と思い込んで攻撃してしまいます。これが膠原病の成り立ちです。残念ながら、何が原因で起こったかまだあまり分かっていません。
一般的な症状として手足の末しょう循環が悪くなり、脱毛も現れます。貧血も起こる場合があります。ただ、この方の年齢では鉄欠乏性貧血の可能性もあります。
いずれにせよ、病気の理解は病気を治す上で一番大切なことです。先生によく話を伺ってください。

問8 バセドー病で服薬、妊娠望む

28歳の主婦。バセドー病で通院中で、メルカゾール錠を服薬しています。子供が欲しいのですが、薬による影響や、産後の体調が心配です。

答:胎盤移行少ない薬に変えて…(1997年12月18日 内科医長 井上 達秀)

バセドー病の薬物療法で使用されるものには、チウラジールなどのPTUとメルカゾール(MMl)があり、両者の間には、作用機序、血中半減期、作用持続時間などに若干の相違があります。わが国では、より強力で効果発現の早いMMlの方が好んで使用されるようですが、質問者のような妊娠希望者に対しては、胎盤移行性の少ないPTUの使用が勧められます。また、PTUはMMlと比較して乳汁排せつも少なく、授乳時に内服しても乳児への影響を心配する必要がありません。
質問者は、MMl毎日一錠内服によって現在、甲状腺(せん)機能は正常にコントロールされていますから、いつ妊娠してもいい状態です。したがって、早めにPTUに変更することによって胎児の甲状腺機能を正常に保つことで、胎児の発育や妊娠経過を良好なものとするとともに、赤ちゃんが誕生した後も授乳を介して充分なスキンシップを図ることが可能となります。
分娩(ぶんべん)を機に甲状腺機能に異常をきたすことがあります。ことに、産後半年くらいによく見られ、バセドー病の悪化のこともあれば、一過性の異常のこともありますので、必ず定期的に受診しましょう。

問9 甲状腺内部に嚢胞状の腫瘍

27歳の女性。右の甲状腺(せん)が腫れたため、受診してエコーで診てもらったところ、腫瘍(しゅよう)がつぶれて嚢(のう)胞になったものだと言われました。今は切らずに甲状腺ホルモン剤を6ヵ月飲んで様子を見るということですが、この先、薬で小さくなるのでしょうか。どのような状態になったら切るべきで、傷跡はどの程度なのでしょうか。

答:増大ある場合は手術も考慮…(1995年8月28日 内科医長 井上 達秀)

右の甲状腺に内部の一部が嚢胞状になった腫瘍がある場合、まず、その腫瘍が良性であるのか、悪性であるのか診断しなければなりません。そのために、甲状腺エコー、シンチグラフィー、CTなどの画像検査とともに、細い針を腫瘍内に差し込み、陰圧をかけることで一部の腫瘍細胞を採取して調べる細胞診を行います。
質問者の場合は、良性の腫瘍と診断され、甲状腺ホルモン剤(T4)投与によるTSH抑制療法が開始されています。この治療法は、“TSHが腫瘍を増大させる”という仮設に基づいたものです。その効果は、腫瘍の種類により大きな相違があり、一概には言えませんが、2~4割で腫瘍のサイズが縮小したとする報告がある一方、有効でないとする報告もあります。
この治療法には、副作用として骨粗鬆(しょう)症や心血管系への悪影響があるため、T4の投与量、投与期間には慎重でなければなりません。また、女性の場合は、閉経前後で治療方針を変える必要があります。
質問者は27歳ですから、6~12ヵ月間TSH値を0.1μUミリリットル以下に抑制して、腫瘍のサイズを観察します。縮小がない場合はT4投与を中止します。
サイズの増大がある場合は、細胞診を繰り返し、場合によっては、手術します。皮膚切開の大きさは腫瘍のサイズによります。手術瘢痕(はんこん)は確かに残りますが、術後の患者さんの多くはネックレスをうまく利用されています。手術をするかどうかは大きな問題ですから、主治医、あるいは専門医とよく相談して決定すべきです。

問10 ももなどに妊娠線のような肉割れ

22歳の女性。身長153センチ、体重43キログラム。両足太ももに妊娠線のような肉吾があり(出産もしていないのに)、最近ふくらはぎの内側にもできてきました。進行を防ぎ、ケアする方法を教えて下さい。

答:線条を消すことは困難…(1998年10月6日 内科医長 井上 達秀)

妊娠線のような線条の皮膚の萎縮は皮膚線条といい、幅数ミリ、長さは時に10センチ移乗に及び、ほぼ直線状に走るはん痕(こん)性線条です。はじめは紅色で隆起し、のちに帯白色ちりめん皺様となり、わずかに陥凹します。肥満者の大腿や臀部によくみられますが、肥満していなくても思春期の体格のよい人でもみられます。女性では、このほかに乳房にもできることがあります。また妊娠6カ月以後の妊婦でよくみられます。
脂肪組織をはじめとする軟部組織が増大することにより、持続的に皮膚に張る力が働き、弾性線維が分離したり、欠如することにより生じます。真皮の断裂の上に薄い表皮が被った状態です。その他、ホルモンの異常によっても生じます。クッシング症候群や大量のステロイド投与時には膠原線維の産生が副腎皮質ホルモンにより抑制されるため、赤色の皮膚線条をきたします。
これらを防止するには、急速な体重の増加や肥満を避けること、また、副腎皮質ホルモン分泌に異常がないかどうか詳しく調べることが必要です。できてしまった線条を消すことは不可能ですが、形成外科的治療で小さくすることができるかもしれません。専門医を受診して、相談されることを勧めます。

問11 3年前に出産、いまだに乳汁分泌?

30歳1児の母。3年前に出産、母乳はほとんど出ずミルクで育てました。現在、生理は正しくあり、妊娠していないのに乳首をつまむと乳汁のような分泌物が出ます。出産前に受診したとき「プロラクチンが高い」と言われました。ホルモンのバランスなど何か関係あるのでしょうか。

答:内分泌の専門医を受診して…(2000年1月26日 内科医長 井上 達秀)

授乳期以外の時期に乳汁が分泌される場合を乳汁漏出症と呼びます。女性に乳汁漏出が起こると高率に無月経を合併するので、この病態を一括して乳汁漏出、無月経症候群といいますが、質問者の生理は順調であり、産後も母乳栄養でなかったので早く月経が再来しています。
乳汁漏出、無月経症候群の原因は、プロラクチンの過剰分泌です。脳の真下にぶら下がっている下垂体という内分泌臓器から各種ホルモンが産出されるが、その異常症で最も多いのが高プロラクチン血症です。高プロラクチン血症の病因で最も重要なのはプロラクチノーマ(プロラクチン産生下垂体腺種=せんしゅ=)です。プロラクチノーマは下垂体腫瘍(しゅよう)の中で最も多く、全体の3分の1を占めます。薬剤による高プロラクチン血症も少なくなく、一般臨床の場でよく使用される胃腸薬が原因となることもあります。原因不明な機能性高プロラクチン血症も多いです。高プロラクチン血症の女性の約70%に乳汁漏出が起こり、約90%に無月経が現れます。
経過予後は基礎疾患により異なりさまざまです。基礎疾患を明らかにした上で、治療として薬物療法か、手術療法が選択されますが、実際には腫瘍サイズ縮小効果を合わせ持つことにより、薬物が治療の第一選択になることが多いです。いずれにせよ内分泌の専門医を受診されることを勧めます。

問12 強皮症で、1年中から咳が出る

63歳の女性。強皮症という病気で、そのためか、1年中から咳(せき)が出て困っています。

答:広範型では肺線維症など伴う…(2000年5月24日 器官別診療部長 塩村 惟彦)

強皮症は全身性硬化症とも呼ばれ、線維の増加によって皮膚が厚く硬くなる皮膚硬化を主症状とし、血管や種々の臓器にも障害を生じる原因不明の疾患です。
指や手の腫脹(しゅちょう)に始まり、皮膚がつまみにくく硬くなり、次第に腕や大腿(だいたい)から胸、腰、腹部、背部などの体幹部にも硬化が広がります。硬化の程度が進むと、動作の際に皮膚の突っ張る感じが強くなり、指の曲げ伸ばしが困難になったり、指先や関節部の皮膚に潰瘍(かいよう)ができたりします。
しかし患者さんによって皮膚硬化の広がりの範囲はさまざまで、手足や顔面のみにとどまる限局型と、体幹部まで及ぶ広範型に大別されます。限局型では臓器の障害を伴うことは少なく、広範型では食道や腸などの消化管や、心臓、腎(じん)臓、肺などの臓器障害を伴う可能性が高くなります。肺では線維の増加による肺線維症を生じると、痰(たん)を伴わない咳(から咳)や、体を動かした時の息切れなどの症状が表れます。肺線維症では、感染症を合併した場合には早期に抗生剤による治療が重要であり、息切れが高度になれば酸素療法も必要になります。
お手紙には詳しく書かれていませんので、から咳が強皮症によるものか、他に原因があるのか推察できません。主治医によくご相談になり、強皮症の現在の病状について説明をお受けになることをお勧めします。

問13 ベーチェット病発症までの経過は?

25歳の女性。10年前からCRP、血沈が高く、半年に一度、免疫内科に通院しています。HLA-B51が陽性で、ベーチェット病に近い病気と言われましたが、ベーチェット病はどのような経過をたどるのでしょうか。また結婚、出産のことを考えると不安です。

答:好中球の機能が亢進した状態に…(2000年9月27日 内科医長 島田 秀人)

病気の理解のために、白血球(好中球)の働きを知る必要があります。好中球は外的な細菌などを処理してくれる大切な防御役です。ベーチェット病は、この好中球が機能亢進(こうしん)状態にあります。残念ながら、原因についてはよく分かっていません。好中球が機能亢進になりやすい素因については診断の一助になりますが(HLA型)、正常者でも1割くらいは同じ型を持っていますので、すぐに病気だと誤解しないでください。人は常時外敵と戦っていますので、生理的に必要な働きと異常な働きを区別することは困難です。ちょうど「蜂の一刺し」で死んでしまう人から平気な人までさまざまなように、外敵に対する反応の仕方は人それぞれです。HLA型も病気の原因というより、この反応の仕方のパターンを知る手掛かりとなるものと理解してください。
ベーチェット病は1つの検査で判定する病気でなく、症状の取り合わせで判定します。前述のように好中球の働き具合は人それぞれですので、たくさんの「疑い」例が存在します。ご相談の方は、恐らく「疑い」例に含まれているものと想像します。なお、妊娠・出産に特別な心配はないようです。
最後に、受診案内を付け加えておきます。恐らく、静岡に大学病院がなかったことが遠因となっていて、専門の相談窓口があまりありません。しかし、浜松に大学病院が設立されて状況は変わってきています。一度、主治医の先生に相談されて、意見を聞かれたらいかがでしょうか。セカンドオピニオンと言って、現在では日常の診療行為です。遠慮や気後れを感じる必要は何もありませんが、情報を得る努力は他人任せでは済まない時代でもあります。

問14 直腸がん手術後、おならが出過ぎる

62歳の男性。3年前に直腸がんの手術をし、順調に回復、現在は2ヶ月に1度診断を受けています。排便は順調ですが、においが強いおならが絶えず出てしまうのが悩みです。抗腫剤カプセルや整腸剤、胃薬のほかに、糖尿病のためのベイスン、グリミクロンを服用しています。

答:糖尿病の薬が原因か…(2001年1月31日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

質問者は3年前に直腸がんのために開腹術を受けた後、現在に至るまで抗がん剤治療により順調に経過しています。直腸の切除は腸内細菌叢や消化吸収にはさほど影響しないのでおならの増加とは関係ありません。それに、腸の手術後におならが出ることは腸の運動が正常であることを意味しますから悪いことではありませんが、質問者の場合は、その量と回数が多すぎるのが問題です。
おならは、ガス産生能を持つ腸内細菌が増加した場合、あるいは、大量摂取した糖質が十分消化吸収されず大腸に達し、腸内細菌による発酵を受け、多量のガスが発生する場合に、腹部膨満とともに出現します。
ベイスンは、糖質の吸収を遅延させることで、食後過血糖を改善する薬であり、最近多くの糖尿病患者さんに処方されますが、投与開始後数ヶ月間は、腹部膨満、おならの増加が、数%の患者さんで認められます。したがって、開腹手術の既往、または、腸閉塞(へいそく)の既往のある患者さんには、腸内ガス等の増加により腸閉塞ようの症状が発現しやすいため、ベイスンは慎重に投与しなければなりません。質問者の場合は、糖尿病の主治医とよく相談し、糖質中心の食事を見直した上で、ベイスンの内服量を減量するか、一度中止してみることを勧めます。

問15 脳下垂体腺腫の手術後失明

53歳の男性。4年前に脳下垂体腺腫の手術を受けましたが、去年再発し、再手術を受けました。ところが手術後、右眼が失明、左眼は視野50月70日%となってしまいました。退院時の病名は脳下垂体機能低下となっています。眼はこれ以上回復しないでしょうか。病の進行を防ぐ方法はありませんか。

答:発育速く湿潤性の強い腫瘍…(2001年2月1日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

脳下垂体は、脳底の中心、視床下部よりぶら下がっている約0.5グラムの小さな臓器ですが、生命維持に必要な各種ホルモンを産生しており大変重要な働きをしています。また、その上方に視神経が走行しているため下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ上方に進展して視神経を圧迫すると視力低下や視野異常を合併します。
質問者の場合はホルモン産生能のない非機能性の腺腫(せんしゅ)に対して経蝶形骨洞腺腫摘出術が施行されたようです。3年後にサイズが増大した残存腫瘍に対して2回目の手術(術式不明)が行われましたが、術後、右眼失明、左眼視野障害の後遺症をきたし、生活の質が大変悪化しています。さらに、正常な下垂体の機能も損なわれ、下垂体機能低下症と診断されてホルモン補充療法を受けているようです。発育が速く浸潤性の強い腫瘍の場合、このような経過もあります。
腫瘍の増大を防止するには、外科療法以外に薬物療法、γナイフ療法がありますが、腫瘍の薬物に対する反応性、腫瘍のサイズと視神経、血管との位置関係などが治療法の選択に影響しますから、ぜひ、内分泌の専門医と相談されることを勧めます。

問16 貧血検査で食事に注意するよういわれた14歳

14歳の男子。学校の貧血検査でヘマトクリット値36.3で赤血球血色素濃度36.4という結果で、食生活に注意するようにいわれました。

答:数値は基準値の範囲…(2001年7月23日 器官別診療部長 塩村 惟彦)

貧血の有無を調べる目的の検査では、血液1立方ミリメートル中の赤血球の数、血液100ミリリットル中のヘモグロビン量(g)、血液中に占める赤血球の容積の割合を表すヘマトクリット値(%)を測定します。これらの数値から平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)などの赤血球恒数を算出して、貧血がある場合診断の参考にします。MCVはヘマトクリット値(%)/赤血球数(100万)*10、MCHCはヘモグロビン量(g)/ヘマトクリット値(%)*100の計算式で得られ、それぞれ赤血球一個平均の大きさ、赤血球内でのヘモグロビン濃度を表します。例えばMCVが小さくMCHCが低ければ小球性低色素性貧血と分類され代表例に鉄欠乏性貧血があり、MCVが大きければ大球性貧血であり、ビタミンB12欠乏による貧血などが考えられ、診断に役立ちます。
この方のヘモグロビン量はMCHC値とヘマトクリット値から計算すると36.4*36.3/100=13.2gとなります。基準値には年齢によって差があり、14歳としてはヘモグロビン量、ヘマトクリット値ともにほぼ基準値の範囲にあり貧血とはいえないでしょう。しかし成長期では鉄分などの需要が増加していますから、食事は偏らないようにしましょう。

問17 糖尿病で血糖値下がらず合併症が心配

58歳の男性。15年前に糖尿病と診断され、食事療法と運動で症状は落ち着いていましたが、最近食後の血糖値などが上がり、手足の先がピリピリしびれるので神経の薬も服用しています。しびれは落ち着きましたが血糖値が下がらず、合併症が心配です。インスリン注射をしたほうがいいですか。

答:個人により違う目標値 最適な治療法相談して…(2002年7月4日 糖尿病・内分泌内科長 井上 達秀)

2型糖尿病の自然歴を知っておくことが重要です。2型糖尿病の発症、進展には、遺伝因子と環境因子の両者が関与しています。前者には、複数の遺伝子が知られています。後者には、過栄養、運動不足、ストレスなどとともに、自ら修正不能な加齢も含まれていることから、糖尿病患者では、加齢により、インスリン分泌量が低下するとともにインスリンの働きも悪くなり、血糖値は漸増します。
従って、血糖コントロールを生涯良好に維持するには、正しい生活習慣(食事、運動療法)を身につけるとともに、その時々の病態に応じた薬物療法が必要になります。血糖コントロールの目標は、年齢、病態によって患者さんごとに違いますが、多くの患者さんではHbA1c 6.5%未満であり、このレベルを維持すれば、合併症(最小血管障害、動脈硬化症)の発症、進展を阻止できます。
目標達成のために、各種経口血糖降下薬、インスリン製剤などを、患者個人個人に応じて選択使用されます。また、作用機序の異なる薬を併用することもあります。相談者の場合も目標達成のために最適な治療法は何か、主治医とよく相談してみてください。

問18 骨髄異形成症候群だが移植は可能?

63歳の男性。3年ほど前「骨髄異形成症候群」と診断され、1年前から輸血を始めました。3カ月に一度10単位です。「骨髄移植」の話を聞きましたが、私の年齢でも可能でしょうか。

答:根治治療は年齢的にも負担大…(2003年9月9日 第一内科医長 島田 秀人)

病名の「異形成」という言葉は、「できそこない」と理解してください。本質的には血液細胞ががん化した状態です。白血病と似ていますが、むやみに増えるのではなく、本来の役目を担う細胞に育つ(分化)性格を残しているのが特徴です。がん細胞も分化さえしてくれれば怖くないのです。病気の細胞も役に立ってくれますので、すべてを排除する治療が良いとは限りません。
(1)役に立つ能力を失うか(白血化)(2)育つ前に枯れてしまうか(骨髄不全)、のどちらの性格が表に出るかが鍵を握っています。(1)か(2)のどちらが問題になるかを予測するために、この病気はさらに細かく種類分けされています。
現在の患者さんの状態は、(2)の状態が次第に表に出てきたと考えられます。輸血には病気を良くする力はありませんが、日常生活を犠牲にせず続けられる負担の少ない方法として広く施行されているものです。
この病気は高齢の方に多いのも特徴です。そのため、「骨髄移植」など根治目標の治療は負担が大きく、勧められないことも多いのが現実です。60歳を超えていますと、移植は考えないほうが良いと思います。最近は、負担の少ない移植(ミニ移植)が開発されていますが、まだ実験的で標準的な治療ではありません。難しい選択ですので、主治医の先生とよく相談される必要があります。

問19 膵炎改善せず、がん化心配

64歳の女性。2011年3月にアルコール性慢性膵炎と診断され治療中です。血圧も少々高く降圧剤を、パニック症状が出て抗不安薬などを服用、膵炎の薬は1日3回服用しています。検査数値は11年トリプミン670(13年793)、アミラーゼ105(同134)、リパーセ58(同75)。禁酒もしています。なぜ効果が出ないのでしょうか。担当医はこの状態が長引くとがんになる可能性はあると言います。

答:完治難しいが禁酒と検査続けて⋯(2013年5月20日 菊山 正隆 消化器センター長)

膵臓には外分泌と内分泌という大きく二つの機能があります。外分泌は、膵液という消化液を、膵臓の中に葉脈のように張り巡らされた膵管を通して十二指腸に送り出し、食物の消化、吸収を助ける働きです。膵液中にはタンパク質、炭水化物、脂肪を分解するトリプシン、キモトリプシン、アミラーゼ、リパーゼなどの酵素が含まれています。内分泌はインスリンやグルカゴンなどのホルモンを直接血液に送り出し、血糖のコントロールを行う働きです。
何かの原因により膵管が変化し、外分泌である膵液の流れが滞ると、膵液が膵管からあふれて血液中に流れ込み、血液検査で酵素の数値が上昇します。膵管に変化を及ぼす原因として最も多いのは慢性膵炎です。時に膵臓がんのこともあります。
ご相談は慢性膵炎によるものですが、慢性膵炎は膵臓の老化現象のようなもので、禁酒をしてもなかなか元には戻りません。ただし、これ以上膵臓を痛めないように禁酒を続けることは大切です。慢性膵炎が膵がんへと進展することはありますが、やや珍しいことです。膵臓の専門家にかかって半年1回程度の定期的な検査を受けるようにしましょう。