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総合内科コラム

最終更新日:2017年9月5日

総合内科のベッドサイドから

総合内科 袴田 康弘

「証拠にもとづいた医療」という言い方が、最近目につきます。
Evidence Based Medicine(EBM)と英語でいいます。患者さんの治療を考えるとき、医師はこれまでの治療成績を参考にしますが、それなら、もっとも良質の医学知識をできるだけたくさん参考にすれば誰もが最良の医療が実現できるはずというのが、「証拠にもとづいた医療」の考え方です。
医学上の証拠ですから、すべての医学者が認める方法で証明されているはずです。どのようにして証明されるのか、述べてみます。

ある治療法が病気に有効であるかどうかを判定するとします。よく用いられる方法が、集団からの無作為抽出による二重盲検試験法です。
簡単な例を挙げてみます。老人痴呆の薬の効果を調べるのに、○○さんには本物、XXさんにはにせ物を処方します。現場の医師もどちらの薬か区別できない仕組みになっています。その結果、「本物を使った人は痴呆症の進行が止まった」「にせものでも痴呆が改善した」等々。治療成績をすべて集めて、統計学の解析で判定します。できるだけ公平な結果を出すために、このような試験がおこなわれます。研究途中の試験に病気の人全員が参加することはありませんが、患者さんの数は多ければ多いほど結果の信憑性は高まります。医学上の証拠は今日までこのような試験の繰り返しによって蓄積されたのです。数年前から、薬や治療法の研究成績はコンピュータ通信で毎週発表されるようになりました。各医師が論文をこつこつ読んで情報を集める時代は終わろうとしています。医師が治療法について考えるとき、患者さんの病状や希望に応じて治療成績を簡単に手に入れ、参考にできる時代です。経験豊富な医師も、コンピュータから出てくるの情報の前には手も足もでません。「コンピュータを使って、いろんな情報をもとにどんな病気もすばやく診断をつけ、治療を選び出せる」というのが、証拠にもとづく医療がめざす目標なのです。現実には、むろんそこまで医学は進歩していません。証拠にもとづいた医療が、ほんとうに実現可能になるのはまだ先のことです。

医学は、実験と観察という方法によって有効な治療法をみつけ発展してきました。科学的に客観的な事象だけを、医学の知識としてきました。論理的でシンプルな説明をするのが科学の基本であり、医学の基本も同様であるとされてきました。これとは反対に、個人的な生活上の問題や日常のなかの一般的ではないできごとを、近代医学はまっさきに切り捨てました。因果関係がわからず記述するのが難しい事象であれば、科学では嫌われ、手がつけられずほおっておかれました。

証拠にもとづいた医療に話をもどします。「証拠にもとづいた医療」が扱える範疇にはいる患者さんは限られています。不規則な時間で生活し、思いつきで食べたり寝たりするような人は、はじめから医学研究の試験に参加させてもらえません。たとえまじめな人でも、別の病気で治療中だったり、おおきな病気のあとだったりするとやはり参加できません。まれにそうではない研究もありますが・・。こうしてみますと医学の常識を作り上げるために参加した人たちというのは、おおむね早寝早起きで、食事は一日三度きっちりと食べて、体重は多すぎも少なすぎもせず、たばこはそんなに吸わない、そこそこ若くて、初めて病気になった人たちなのです。もう、お気づきでしょう。「うちのおじいさんが最近元気がない。たばこはよく吸ったし、大酒飲みで、血圧が高い、年齢もいっているけど、。どうしたんでしょう?なにか薬は?」というような質問には、だれも医学上の証拠をつけて答えられません。

現代医学の証拠は、一般の方々が期待されるほどには蓄積していません。医学の方法論は、単純化したモデルから答えを見つけ一般論を導き出す近代科学の方法論の域を出ていません。では、複雑な集団からなり、相互作用が入り交じる、多様性に富む臨床医学についてはどうすればよいのか、答えは患者さんのベッドサイドで模索中です。

(平成10年6月、静岡県立総合病院・総合内科の診察室にて、袴田康弘)

高齢者の不眠

静岡県立総合病院 佐古 伊康(元院長)

高齢者では不眠を訴えることが少なくありません。高齢になると、不眠の原因となる病気がなくても、寝付きが悪かったり、夜中に何回も目が覚めたり、朝の目覚めが早すぎたりして悩むことがあるものです。


睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があります。レム睡眠では、筋肉が完全に弛緩し、眼を開けると急速な眼球運動がみられます。ノンレム睡眠では、筋肉は弛緩しても完全には弛緩せず、急速な眼球運動はみられません。
入眠すると、一晩に3ないし4回ノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返します。高齢になると全睡眠に対するレム睡眠の割合が減少し、ノンレム睡眠では浅い睡眠が増加し、深い睡眠が減少します。また、中高年になるにつれて睡眠時間は短くなり、眠りにつくまでの時間は延長し、睡眠中に覚醒する回数は多くなります。すなわち、高齢者では睡眠のパターンが若年者とは著しく異なっています。

不眠の原因いろいろ

不眠の原因としては、心臓や肺の病気があり、横臥時に動悸、呼吸困難、息切れ、空咳などが強くなって眠れなくなることがあります。また、あちこちの痛みや痒みがあり、それで睡眠が妨げられるのは当然のこととして、痛みや痒みに対する不安が不眠を増幅していることが少なくありません。腎臓、膀胱、前立腺の病気などで夜間排尿の回数が多いことによる睡眠障害もあります。不眠が身体的な病気からきているものでは、まず原因疾患を治す必要があります。

神経質な人では、寝室、寝具が変わったり、部屋の明るさや異音により不眠になるのは誰しもあることです。いずれにせよ、不眠がある人では、昼寝をせずに睡眠を夜間に集中するとか、昼間に適度の運動を行って疲労感を覚えるとか、安眠のための住環境を再点検するとか、夜間の排尿回数が多い人では夕方以後の水分接取、お茶やコーヒーを控えるとか、就寝時間を遅くするとか、各人各様の工夫が必要です。

精神・神経的な病気から

高齢者では精神・神経的な病気から不眠を来たしていることも少なくありません。たとえば、ノイローゼでは、とくに不眠の原因がなく、実際には十分眠っていても眠ったという充足感がなくて、不眠から病気になるのではないかと不安になり、それでますます寝つけなくなります。

また、うつ病や老年期痴呆の初期症状、脳卒中の後遺症のうつ状態で不眠になっていることもあります。うつ病では、不眠の他に食欲減退、下痢や便秘、やせなどがあり、とくに午前中に元気が出ない傾向があります。精神科などの専門医を受診して、早期に元気を取り戻したいものです。

息切れ・空咳

不安・ノイローゼ

運動器官の老化

静岡県立総合病院 西島 直城(元副院長)

「ハイヒールや中腰は腰に悪いですよ。」
「正座したら膝が曲がってきて水がたまるようになりますよ。」
「お爺ちゃんの腰は変形して余分な骨がたくさんできてますよ。」
「お婆ちゃんの腰は骨がもろくなっていて、これは骨粗鬆症ですよ。」
「肩が痛いのは五十肩だからね。」

これらは整形外来でよく聞かれる会話です。
年はとりたくないと思いつつ、いつの間にか中年となり、腰や肩に手をやって、成長した我が子のたくましさ俊敏さに目を細め、自分の青春時代に郷愁を覚えるのは私ばかりではないでしょう。

腱鞘炎(けんしょうえん)と更年期

四肢の機能動作は、神経の命令で筋肉が収縮して、筋肉の先の腱が骨を引っぱり、関節が動き、手足の動きとなります。腱が大きく滑らかに滑走(すべり)することにより、手指が繊細にしかも力強く動くことができます。

腱が摩耗しやすい所には腱鞘があり、腱はそれに包まれ、さらに腱鞘から潤滑油を受けています。更年期になるとこの潤滑油の分泌が悪くなります。すると腱鞘炎になります。手のしびれ、痛み、腫れの多くはこの腱鞘炎が原因です。

腱鞘の代謝とホルモンには密接な関係があります。腱鞘炎は女性に多く、ことに閉経期の女性に多くみられます。昔はこういった腱鞘炎からおこる症状を神経痛・リューマチといっていました。手足や腰が痛いと老いを感じるようになります。

それでは腱鞘炎の代表を4つ取り上げてみましょう。
(1)バネ指

中年の女性が、朝、手が腫れぼったい、指が伸びにくい、第2関節が痛い、と言ったらまず腱鞘炎によるバネ指です。
典型的な腱鞘炎は、その指を無理に伸ばしたり、曲げたりするとカッツン、カッツンとバネ仕掛けになるのでこの名があります。手の平(手掌)を抑えると圧痛点があります。早期の治療は安静が一番です。

(2)手根管症候群(写真左参照)

手がしびれる、これも十中八九、腱鞘炎が原因です。
手首では手根管という狭い管のなかに大きな腱が9本ひしめきあって通っており、この中に極めて大切な正中神経も通っています。ここに腱鞘炎があればその神経は押し潰されあえいでいます。夜寝る時にジンジンとしびれる症状があれば、まずこれであり、決して首(頸椎)からの症状ではありません。神経症状がひどくなるとつまみ動作までがおかしくなり、お皿をポロっと落とすようになります。

さらに肩や首にまで痛みが広がることがあります。肩と手は密接な関係があり、肩手症候群という病名もあります。腱鞘炎があると肩まで痛くなります。これも早期の治療は安静が一番です。

(3)ドケルヴァン氏病(写真右参照)

親指を動かすと痛い、握りこぶしを作って手首を曲げると飛び上がるほど痛い。

これも親指を動かす腱が手首のところで、多くの腱とひしめきあっておこる腱鞘炎からくる症状です。これらの腱鞘炎は圧倒的に更年期の女性に多くみられます。

(4)上腕二頭筋長頭腱炎

そもそも五十肩というのは、ちょうど50代になって肩が痛く動かしにくくなることが多いのでこの名があります。しかし、原因はいろいろあるようです。

上腕二頭筋長頭腱炎も五十肩の原因の一つです。上腕二頭筋の長頭腱は、肩の部分で、上腕骨の骨頭下の骨に囲まれた長い長いトンネルを通っています。この腱は上腕の運動に伴ってトンネルの中を大きく滑走します。この腱は、馬では幅広く前方にあって、肩の安定性に大変大切ですが、猿から人間になるに従って肩関節の奥へ奥へ、そして深く骨をえぐったように骨頭下に溝を作って、その中に存在します。従ってここでも、せまいトンネルの中で腱が摩耗しやすいので腱は腱鞘に包まれています。

50近くになると、ここの潤滑油が十分に分泌しなくなります。純粋な上腕二頭筋長頭腱炎は少く、たいてい他の部分の老化も伴っています。こうなると、もはや野球のピッチャーにはなれません。こじれたら肩が痛くて動かしにくいばかりか、手まで腫れぼったくなることがあります。


「運動器官の老化」は、いろいろな部位でいろいろな障害をもたらします。私達は老化という言葉が嫌いなので「退行性変性」とか「変形性」とかいう言葉を用いています。今回はその中の腱鞘炎を取り上げました。
「運動器官の老化」を防ぐには適当な運動が一番と自分に言ってきかせています。歩きながら考えるという言葉があるように、「歩く」のは主に反射で行われ、あまり大脳皮質からの命令を要しません。歩くことは反射機能・平衡機能の賦活(訓練)に大変良いのです。一方、字を書きながら話をするのは難しいように、「字を書く」、このことは高次の機能を必要とし、脳の皮質からのきちんとしたコントロールが必要です。
適当に歩いたり、適当に友人に便りをすることが、運動器官の老化防止に効果があります。私など、車に乗り、パソコンばかり利用しているので、肩や腰は痛いし、漢字は忘れ、手紙も自筆では書けなくなってしまいました。

以上知覚の範囲

母指