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中国浙江省研修を終えて

最終更新日:2018年7月25日

肝胆膵外科医師 金本秀行

今回、浙江大学医学院付属邵逸夫医院に1週間、浙江省人民医院で2週間、主に肝胆膵外科の手術を中心に研修しました。

1.診療について
基本的には1人のチーフDrが、その下に3~4名のスタッフDr、3~4名のレジデント、2~3名の医学生という構成で1つのユニットをつくり、朝の回診・手術などをチームとして行っていくスタイルであり、それを統括する主任教授がいるというシステムになっています。私の指導教官となった邵逸夫医院のDr王も人民医院のDr張も、手術手技のみならず、非常に素晴らしいチームを作っていました

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2.手術室について
手術室は両病院とも当院と同じ規模の25部屋前後ですが、毎日120~150件程度の手術が行われています。物理的に効率のよい運用をするために、日本にはない「職種」の方が裏方として活躍していることに驚きました。まず、手術患者を待機させておくPreop roomがあり、順番が来ると、「ポーター」と呼ばれる搬送係が看護師とともに患者をストレッチャーで搬送します。そして、術前の患者とまだ気管内挿管をされたままの患者を入れ替えます。術後の患者は、手術室内で抜管せず、リカバリーroomに搬送され、そこで完全覚醒ののちに抜管します。また、手術が終わると同時に、清掃係が現れ、床清掃・ごみの回収などが始まります。「無駄な時間」を作らない効率のよい手術室運営で、ある日には膵頭十二指腸切除→肝切除術→腹腔鏡下胆嚢摘出を3件行ったにもかかわらず、17時には終了しているのには大変驚きました。

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3.肝胆膵外科手術の技術
両病院ともほぼ肝切除の90%以上を腹腔鏡下で施行しています。そして、その技術は日本のリーディング病院にも引けをとらないどころか、技術的には上を行っているといっても過言ではないでしょう。肝切除に関しては人民病院のDr張の技術が素晴らしく、超音波破砕(CUSA)を使わずに、ハーモニックスカルペル(超音波凝固切開)のみで、肝右葉切除を2時間半程度でほとんど出血することなく施行したのには驚きました。また、腹腔鏡下あるいはロボット下の膵頭十二指腸切除術も数例見学しました。近い将来、当院でもはじめることになる術式なだけに、大変有意義な見学で、特に縫合結紮技術の高さは目を見張るものがありました。

看護師 小柳仁見

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邵逸夫医院・浙江省人民病院ともに県総での研修経験のある医師・看護師から声を掛けていただき長年にわたる友好提携の歴史を実感しました。二病院ともに積極的に国際交流を行っており、邵逸夫医院はJCI(Joint Commission International)取得病院で欧米、アジア、アフリカからの研修生の受け入れと、多くの医師・看護師が海外研修に派遣されていることもあり、受け入れ態勢が整っており不自由することなく研修を終えることができました。二病院ともにアメリカのシステムが導入されておりPACUの活用とPICC専門看護師により効率的に手術室が運営されていることがわかりました。

また、手術室での研修を通して周術期の一連の流れを見学し、安全を確保しつつ手術室の効率的な運用がどのように行われているのか、また質を確保していくための人材育成、教育システムについて学ぶことができました。二病院ともにPACU(Pre-op、Post-op)を活用した手術室の効率的な運営が行われており、学生のカリキュラムの中に手術室が1ヶ月間含まれていること、新人看護師は3~4ヶ所の部署を6ヶ月間ローテーションすることで能力と希望にかなった部署に配属され、即戦力となり、安全な人の配置につながることがわかりました。その他PICC専門看護師が院内すべてのPICC挿入を実施することで、手術室の効率運用と分業化がされ、医師は業務に専念できる環境が整えられていることがわかりました。また2年毎の能力試験により質が維持されており、人材育成・教育面で参考になりました。

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2年毎の能力試験など先進的な業務管理体制を行っているということでしたが、スタッフみんなが楽しそうに仕事をしていて職場の雰囲気がとても良い印象を受けました。手術室でも食堂でも多くのスタッフと自然と会話が弾み溶け込むことができました。

今回の研修で2回講演の機会をいただきましたが、私にとって英語でのプレゼンは今回が初めての経験で、とても大きな自信になり自己研鑽していくためのモチベーションにつながりました。「患者さんのために」という気持ちは中国も同じ。共通した意識を持った多くの仲間に出逢えたことが今回の研修の大きな収穫です。