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最終更新日:2010年6月21日
静岡県立総合病院長 佐古伊康
高齢者では不眠を訴えることが少なくありません。高齢になると、不眠の原因となる病気がなくても、寝付きが悪かったり、夜中に何回も目が覚めたり、朝の目覚めが早すぎたりして悩むことがあるものです。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があります。レム睡眠では、筋肉が完全に弛緩し、眼を開けると急速な眼球運動がみられます。ノンレム睡眠では、筋肉は弛緩しても完全には弛緩せず、急速な眼球運動はみられません。
入眠すると、一晩に3ないし4回ノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返します。高齢になると全睡眠に対するレム睡眠の割合が減少し、ノンレム睡眠では浅い睡眠が増加し、深い睡眠が減少します。また、中高年になるにつれて睡眠時間は短くなり、眠りにつくまでの時間は延長し、睡眠中に覚醒する回数は多くなります。すなわち、高齢者では睡眠のパターンが若年者とは著しく異なっています。
不眠の原因としては、心臓や肺の病気があり、横臥時に動悸、呼吸困難、息切れ、空咳などが強くなって眠れなくなることがあります。また、あちこちの痛みや痒みがあり、それで睡眠が妨げられるのは当然のこととして、痛みや痒みに対する不安が不眠を増幅していることが少なくありません。腎臓、膀胱、前立腺の病気などで夜間排尿の回数が多いことによる睡眠障害もあります。不眠が身体的な病気からきているものでは、まず原因疾患を治す必要があります。
神経質な人では、寝室、寝具が変わったり、部屋の明るさや異音により不眠になるのは誰しもあることです。いずれにせよ、不眠がある人では、昼寝をせずに睡眠を夜間に集中するとか、昼間に適度の運動を行って疲労感を覚えるとか、安眠のための住環境を再点検するとか、夜間の排尿回数が多い人では夕方以後の水分接取、お茶やコーヒーを控えるとか、就寝時間を遅くするとか、各人各様の工夫が必要です。
高齢者では精神・神経的な病気から不眠を来たしていることも少なくありません。たとえば、ノイローゼでは、とくに不眠の原因がなく、実際には十分眠っていても眠ったという充足感がなくて、不眠から病気になるのではないかと不安になり、それでますます寝つけなくなります。
また、うつ病や老年期痴呆の初期症状、脳卒中の後遺症のうつ状態で不眠になっていることもあります。うつ病では、不眠の他に食欲減退、下痢や便秘、やせなどがあり、とくに午前中に元気が出ない傾向があります。精神科などの専門医を受診して、早期に元気を取り戻したいものです。

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