歯科口腔外科

歯科口腔外科の特色

  • 静岡県の基幹病院として、口腔外科を専門としている常勤歯科医5名で診療を行っています。
  • 当科は口腔(口の中)、顎(あご)、顔面ならびに隣接組織の疾患の治療を専門としており、一般の歯科治療(虫歯や歯周病、入れ歯等)は行っておりません。
  • 地域の医療機関との病診連携を重視しており、当科を初めて受診いただく場合には医療機関からの紹介状が必要となります。受診のご希望があれば、かかりつけ医にご相談下さい。
  • 静岡市内はもとより、幅広い地域からの患者さんに対応致します。
  • 定期的にカンファレンス(症例検討会)を行い、スタッフ間で情報共有や協議を行った上で手術を含めた治療方針を決定しています。
  • 当科は日本口腔外科学会研修機関に認定されており、エビデンスに基づいた治療を提供するとともに口腔外科専門医の育成にも力を入れています。

診療対象疾患

診療内容は親知らず(別名:智歯/ちし)や保存不可能な歯の抜歯をはじめとして、舌癌や歯肉癌などの口腔癌や口腔良性腫瘍、下顎前突(受け口)などの顎変形症、顎関節症などの顎関節疾患、歯の脱臼や顎骨(あごの骨)骨折などの外傷、顎骨や口腔軟組織の囊胞(袋状の病気)、白板症や扁平苔癬などの前癌病変、唾石等の唾液腺疾患、歯性感染などの炎症、悪性腫瘍切除後や外傷後の骨造成手術を必要とするインプラント治療等、の専門的な治療を行っています。

また、院内他科での手術、抗癌剤投与や放射線治療の際に、口腔内細菌が関与する様々なトラブルを予防するため、地域の歯科医院と連携して入院前から入院中、退院後までの継続した口腔ケアについても積極的に取り組んでいます。

スタッフ紹介

職名氏名専門領域
歯科口腔外科部長足立 守安口腔外科
医長福田 幸太口腔外科
副医長松田 紗由美口腔外科
副医長中村 有宏口腔外科
レジデント廣田 昌大口腔外科
主任歯科衛生士谷澤 順子-
主任歯科衛生士西野 貴代-
歯科衛生士深澤 早矢加-
歯科衛生士仲谷 美香-

親知らず(おやしらず)について

腫れや痛みが少ない抜歯を目指しています

親知らずは全て抜歯する必要がある訳ではありませんが、斜めや横向きで歯肉の中に埋没している場合は常に清掃状態が悪くなり、周囲の腫れや痛みの原因となることがあり、時として重篤な歯性炎症(顔の腫れや痛み)を引き起こすこともあります。また、隣接した歯に虫歯や歯周病を生じるリスクや、歯列不正(歯並びが悪い状態)の原因となることもあります。
親知らずがトラブルの原因となる場合や、今後その誘因になると判断される場合には早めの抜歯が推奨されています。

診断について

初診時に口腔内の診査やレントゲンで顎骨や歯の状態を検査します。必要に応じてCT検査(X線を用いた断層画像)を行い、顎骨の状態や歯の形および方向や位置、周囲の神経や血管との位置関係等を三次元的に評価した上で抜歯計画を立てています。

パノラマレントゲン画像

パノラマレントゲン画像

CT画像

CT画像

治療について

当科では親知らずの抜歯手術は大きく分けて2つの方法で対応しています。
従来通り通院による外来手術で行う方法と、入院していただき複数(左右両側)を一括で抜歯する方法がありますが、歯の状態から予想される手術時の負担、患者様の要望等を考慮した上で、抜歯方法を決定しています。

1)外来手術による抜歯
外来手術は午後に行っており、ご希望の日時を予約いただいた上で抜歯を行っています。複数(両側)を抜歯する必要があれば、数回に分けて行います。
尚、初診当日の抜歯は行っておりませんのでご了承ください。

2)入院手術による一括抜歯
入院下での一括抜歯は1泊2日の入院が必要となりますが、設備や器具が整っている手術室で処置を行い、手術中は静脈内鎮静法を併用します。
この方法は点滴から鎮静薬と鎮痛薬を投与することで、恐怖感が少ない状態で手術を行うことができます。更に、術後に鎮痛薬や腫れ止めの点滴を使用することにより、術後の苦痛症状をより軽度に抑えることが可能となり、年々入院下での一括抜歯を選択される患者様が増加しています。
また、抜歯時の負担が通常より大きいと判断される場合は2〜3泊程度の入院で全身麻酔での抜歯をお勧めする場合もあります。

スケジュール

口腔癌(こうくうがん)について

治らない潰瘍や口内炎には注意が必要です、放置せずご相談ください

口の中にも癌ができます。その代表として舌にできる舌癌や、歯肉にできる歯肉癌などがあります。
口内炎や潰瘍が数週間治らない場合や出血やしこりを伴っている場合等は早めの検査が推奨されます。

診断について

口腔癌が疑われる場合は、病気の経過や表面の性状(色や硬さ)、大きさ等を精査するとともに、病変の一部を採取し、顕微鏡による検査で癌細胞が見られるか、否かを検査します。
更にX線写真やCT検査(X線を用いた断層画像)、エコー検査(超音波検査)、MRI検査(磁気を用いた断層画像)、PET-CT検査(癌細胞に取り込まれたFDGと呼ばれる物質を映し出す断層画像)を総合的に評価し、病気の広がりや転移の有無を診断しています。

治療について

治療を行う際には患者様やご家族に十分な説明を行い、標準的治療(現状で最も効果が確認されている治療法)を主に治療計画を提示しています。
一般的に各領域の癌の治療には手術、抗癌剤、放射線を軸に治療が行われています。口腔癌の初回治療は手術的切除が第一選択と言われており、進行した症例で切除範囲が大きくなる場合には、形成外科医と協力し再建手術を行うこともあります。また、広範囲の顎骨の欠損を伴う場合には早期に顎義歯(アゴつきの入れ歯)を作製し、形態と機能の回復を図っています。
口腔癌は頸部(くび)のリンパ節に転移することがあります。その際は頸部リンパ節転移に対する手術(頸部リンパ節郭清)を行いますが、術後に頸部や肩にこわばりを生じることも多く、治療の一貫として整形外科やリハビリ科の協力のもと、術後早期から頸部や肩のリハビリ治療を行い、術後の症状の緩和に努めています。

舌癌

舌癌

舌癌

舌癌

頬粘膜癌

頬粘膜癌

上顎歯肉癌

上顎歯肉癌

下顎歯肉癌

下顎歯肉癌

下顎歯肉癌

顎変形症(がくへんけいしょう)について

顎(あご)の突出や変形、かみ合わせが気になる方へ

顎変形症とは
顎変形症は、上顎(うわあご)あるいは下顎(したあご)の骨の過成長や劣成長、左右非対称など、骨格的な原因によりかみ合わせのバランスが偏った状態に用いられる病名です。
顎がこのような状態であれば、うまく噛めない、言葉が聞き取りにくいなどの障害がみられることがあります。また、容貌が悩みの一つとなることも少なくありません。
顎変形症の多くは、歯列矯正治療と顎矯正手術(別名:骨切り手術)を組み合わせることで治療することが可能になっており、矯正歯科と口腔外科が連携することにより適切な診断と治療を受けることができます。
顎変形症の治療には、顎矯正手術を前提として矯正歯科から当科を紹介いただく場合が多いですが、矯正歯科が決まっていない患者様には対応可能な矯正歯科をご紹介することもできます。

顎変形症には様々なタイプがありますが、日本人に多い下顎前突症の診断および治療の概要ついて下記で紹介します。
下顎前突症の大半は、反対咬合(前歯の噛み合わせが上の歯に対して下の歯が前に出ている状態)となっており、歯の土台となる骨も下顎が上顎より前方にある状態となっています。

顔面側貌

手術前側面

手術前側面

手術後側面

手術後側面

口腔内側貌

手術前口腔内側面

手術前口腔内側面

手術後口腔内側面

手術後口腔内側面

診断・治療について

1)初診時
患者様やご家族の治療に対する要望をお聞きしながら、治療の流れや期間、手術についてのお話をします。

2)検査(矯正歯科・口腔外科)
顔面や顎のレントゲンやCT撮影、上下の型取りを行い、分析を行います。これにより上下の顎の位置関係が日本人の正常範囲内か、否かを検討します。
その結果、歯列矯正のみで治療が可能な場合もあります。骨格性下顎前突症と診断され、手術を含めた治療のご希望があれば、下顎骨自体を後退させる手術の適応となります。

3)術前矯正(矯正歯科)
上下の歯に矯正装置を装着後に弾力のある針金やゴムを用いて歯を移動し、手術後に予定した噛み合わせとなるように準備します。術前矯正の期間は、おおよそ1年から2年程度です。

4)骨切り手術(口腔外科)
下顎前突症の手術で多く用いられる下顎枝矢状分割術(かがくししじょうぶんかつじゅつ)の場合、入院期間は2週間程度です。
手術は全身麻酔下で行い、歯を含む下顎骨の一部を切って移動し、噛み合わせを整えます。移動後の骨は体に害のない材料でできたネジやプレートで固定します。
手術後は上下の噛み合わせを固定した状態で過ごしていただき、顎の安静を保ちます。手術はすべての操作を口腔内で行うことから、顔の皮膚に傷痕が残ることはありません。

手術説明

5)術後矯正(矯正歯科)
手術後に上下の噛み合わせの調整と安定化を行います。術後矯正の期間は、おおよそ1年から2年程度です。

6)保定(矯正歯科)
術後矯正の後、針金とプラスチックでできた保定装置を装着する必要があります。

治療費について

自立支援医療の指定医療機関でかつ顎口腔機能診断の施設基準の届け出をしている医療機関においては、口腔外科にて外科的矯正を行うことを前提とした「顎変形症」のための術前および術後の歯科矯正に関しては、保険での治療が認められています。同様に上述の医療機関にて術前矯正を行った場合の顎矯正手術(口腔に関する医療)についての自立支援医療の指定医療機関で保険を用いて行うことができます。