頭蓋縫合早期癒合症

出生後、あかちゃんの頭は急激に大きくなり、生後一年で頭囲は1.5倍になります。あたまの成長部位は、あたまの骨に存在する骨同士の継ぎ目(頭蓋縫合と言います)です。この継ぎ目に骨が添加されることで、頭蓋縫合に対して垂直方向に成長します。

頭蓋縫合早期癒合症は、この一つあるいは複数の頭蓋縫合が早期に癒合することで、あたまの骨の成長が妨げられることにより生じる変形です。あたまの形だけでなく、場合によりあたまの中の圧力が増大します(頭蓋内圧亢進症状)。癒合をおこす縫合の部位により、特徴のあるあたまの形態になります。矢状縫合早期癒合は舟状頭蓋という長い形態になります。片側冠状縫合早期癒合や片側人字縫合早期癒合は、癒合をおこした方の成長が妨げられ、代償性に反対側が過成長をおこすことで斜頭蓋と呼ばれる変形を引き起こします。両側冠状縫合早期癒合は、頭の前後が短い短頭蓋になり、前頭縫合早期癒合では前額部が三角形になる三角頭蓋になります。また複数の縫合が癒合すると、尖頭蓋(塔状頭蓋)やクローバーリーフ頭蓋と呼ばれる変形を引き起こします。

頭蓋縫合早期癒合症は、非症候群性と症候群性に大きく分けられます。症候群性とは、クルーゾン症候群、アペール症候群、ファイファー症候群、アントレー・ビクスラー症候群、セトレ・コーツェン症候群などがあります。非症候群性の場合は、遺伝的要因が薄い特発性のものがほとんどを占めます。症候群性の場合は、線維芽細胞増殖因子受容体の遺伝子変異が原因として同定されています。また、症候群性のものは、中顔面の低形成や、手足の変形を伴うものがあります。

治療方法は、MCDO法(Multi-directional Cranial Distraction Osteogenesis: 多方向性頭蓋延長術)、頭蓋形成術、頭蓋骨延長法(内固定式骨延長法)などを、変形の部位・程度に応じて使い分けます。治療に際しては、当院脳神経外科と合同で、頭蓋内圧亢進症状やキアリ奇形に対する治療を行います。