グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


脊髄性筋萎縮症の治療~早期診断・治療の重要性~


神経科科長
松林 朋子

脊髄性筋萎縮症とは

脊髄性筋萎縮症(spi nal muscular atrophy: SMA)とは、脊髄前角細胞の病変によって起こる神経原性の筋萎縮症てす。体幹や四肢の筋力低下、筋萎縮を進行性に示します。
小児期に発症するI型(独座不可能)、II型(独歩不可能)、III型(独歩可能)と、成人期に発症するIV型に分類されます(表1) 。SMAの有病率は10万人あたり1人から2人で、発生率は出生2万人に対して1人前後と言われています。
表1.脊髄性筋萎縮症の分類
病型 発症年齢 最高到達運動機能 亜型分類:
詳細な最高到達運動機能
0 胎児期 なし 0:なし
1 0~6ヵ月 独座不可能 1a: 頚定なし
1b: 頚定あり
2 <18ヵ月 独歩不可能 2a: 8ヵ月以降に独座
2b: 8ヵ月以前に独座
3 18ヵ月< 独歩可能 3a:階段上り不可能
3b:階段上り可能
4 20歳< 正常 4:すべて正常に到達

脊髄性筋萎縮症の原因

SMA原因遺伝子は運動神経細胞生存(survival motor neuron: SMN)遺伝子です。第5染色体に存在し、SMN1遺伝子とその近傍の遺伝子SMN2遺伝子があります。SMN1遺伝子からSMN蛋白質が作られますがSMN2遺伝子からは僅かのSMN蛋白質しか作られません。
SMAにおいてはSMN1遺伝子変異が原因で、SMN1遺伝子由来のSMN蛋白質は作られません。上述の僅かなSMN2遺伝子由来のSMN蛋白質しかない状態となります。 SMN2遺伝子の数はSMN2遺伝子のコピー数て表しますが、コピー数が多い方が軽症となる傾向にあります。

脊髄性筋萎縮症の症状

全ての型て筋力低下と筋萎縮を示し、深部腱反射の減弱・消失が見られます(表1)。以下に詳しい説明を記します。

1型

「生後 6カ月ごろまてに発症、運動発達が停止」し、体幹を動かすこともできません。支えなしに座ることができず、哺乳困難、嘩下困難、誤嘩、呼吸不全を伴います。舌の線維束性収縮がみられます。
治療薬のなかった時代には、人工呼吸器を用いないと95%は18カ月まてに死亡するといわれ、生命を救うためには気管内挿管や気管切開と人工呼吸管理が必要でした。

2型

支えなしに立ったり、歩いたりすることがてきません。舌の線維束性収縮、手指の振戦がみられます。「成長とともに関節拘縮と側弯が著明」になります。
また、上気道感染に引き続いて、肺炎や無気肺になり、呼吸不全に陥ることがあります。

3型

「立ったり歩いたりできていたのに、転びやすい、歩けない、立てない」という症状がでてきます。

4型

「成人発症」です。側弯は見られず、発症年齢が高いほど進行は緩やかです。

脊髄性筋萎縮症の治療法

現在、以下の3つの疾患修飾薬が承認されています(表2)。

ヌシネルセン

SMN蛋白質産生機序をもつ核酸医薬品て髄腔内投与をします。負荷投与後は乳児型ては4カ月間隔、乳児型以外では6カ月間隔の投与てす。

オナセムノゲンアベパルボベク

AAV9(アデノ随伴ウイルス血清型9)ベクターにSMN遺伝子を組込んだ遺伝子治療薬剤で2歳未満が対象です。1回1時間かけて点滴静脈注射します。カルタヘナ対応(※)が必要で、厳格な施設基準が設けられています。当院は本遺伝子治療の施設基準を満たしています。
※遺伝子組換え体を用いるため、「カルタヘナ法」に基づく安全管理措置が求められます(環境や人への影響を防ぐ法的枠組み)。

リスジプラム

SMN蛋白質産生機序をもつ低分子薬です。経口投与薬で、毎日1回内服します。当院では患者さんの状態に合わせて、これら3つの疾患修飾薬を選択しています。
表2.脊髄性筋萎縮症の治療薬
一般名 ヌシネルセンナトリウム オナセムノゲン
アベパルボベク
リスジプラム
モダリティ 核酸医薬 遺伝子治療薬 低分子薬
作用機序 SMN2スプライシング修飾 SMN遺伝子補充 SMN2スプライシング修飾
対象 全型:全年齢 1型2型・2歳未満 全型:全年齢
投与形態 髄腔内注射 (4~6ヵ月毎) 点滴静注(単回) 経口 (1日1回)

新生児拡大スクリーニング検査

新生児スクリーニング検査は確定検査てはありません。すぐに専門医て遺伝子検査を施行します。遺伝子検査の結果、SMAと診断された場合には、発症前にこれら疾患修飾薬の治療を受けることで発病を抑えたり、軽症化させることができます。
遺伝子検査の結果、1型や2型になる可能性がある、つまりSMN1遺伝子が0コピーでかつSMN2遺伝子が2コピーまたは3コピーという報告を受けた場合には、SMAの症状がなくても、大至急の治療開始が推奨されています。

まとめ

脊髄性筋萎縮症を筆頭に、小児神経疾患では遺伝子治療を含めた様々な治療が可能となりました。最近のトピックスとして、デュシャンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療薬が条件および期限付きて製造販売承認されました。
このように神経筋疾患ては、 目まぐるしく治療薬が開発されています。乳幼児期に運動発達の遅れが認められ、これらの疾患が疑われる場合、当院にご連絡ください。速やかに対応致します。
  1. ホーム
  2.  >  当院について
  3.  >  広報・発行物・公式SNS・年報
  4.  >  広報紙『こども病院ひろば』
  5.  >  脊髄性筋萎縮症の治療~早期診断・治療の重要性~