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診療科

気道手術

最終更新日:2016年4月3日

気道狭窄は我々小児外科医が扱う疾患の中でも、治療の難易度が非常に高いもののひとつです.手術もそうですが,術後に厳密な呼吸・循環管理が必要なことから,十分な経験を持った小児外科,心臓血管外科,麻酔科,循環器,集中治療のチームがあって初めて行うことができます.当科ではさまざまな気道狭窄に対して気道手術(肋軟骨移植、スライド気管形成、ラリンゴマイクロサージェリー、レーザー治療など)を行ってます。

当科の特徴は日本では小児にほとんど行われていない喉頭顕微鏡下手術を小児の気道手術に導入しており、総合的な気道手術が行われていることです。また重症例では術前後はPICUで管理が行われチームで気道狭窄の治療をおこないます。


1. 顕微鏡下喉頭手術(ラリンゴマイクロサージェリー)

喉頭軟化症、声門下狭窄、喉頭気管食道裂や術後の肉芽などに対して、顕微鏡下に手術・処置を行います。全国でも喉頭軟化症、気管食道裂などにこのような治療が行える施設はあまりありません。喉頭・気管外科に導入することで、より先進的な治療を目指しています。

喉頭閉塞症状を起こす疾患

声帯の周辺を喉頭と呼びます。何らかの疾患で,喉頭が閉塞してきた場合には,息を吸う時に喘鳴が聞こえ,泣いた時など大きく息を吸う場合に強くなります.症状が強くなると,普通の状態でも息をするのが苦しくなり,ミルクもむせ込んで上手に飲めなくなることもあります.クループに代表される内科的な疾患も多くありますが、中には手術が必要な外科疾患もあります。
<喉頭軟化症>
喉頭軟化症は,喉頭閉塞症状を起こす疾患の中では最も多いものです.喉頭の軟らかい部分が、息を吸う時に、声帯に向かって引き込まれるもので,3つのタイプに分けられます.90%以上は,あまり強い症状は出ず、体が大きくなるとともに自然に治っていきますが,症状が強く呼吸の補助が必要になる場合やミルクがうまく飲めなくて体重が増えない場合などで,手術が必要になることがあります.

喉頭軟化画像1

<喉頭嚢胞>
喉頭に液体の入った袋が出来るものです.これが声帯の方に張り出して,息を吸いにくくなります.
<一旦は気管切開が必要になる疾患>
両側声帯麻痺(声帯が左右ともに動かない),声門下狭窄(声帯の奥に狭い部分がある)などで呼吸困難がある場合には,気管切開が必要になります.しばらくは,気管切開で経過観察をしますが,成長を待つことで改善が見られなければ,気管切開を離脱するために手術を行います.手術時期は4~5歳,年中さんの歳を目途に予定していきます.

喉頭裂

*誤嚥を起こす疾患
唾液やミルクが気管の中に入りやすい場合には,ミルクを飲む度にむせ込んだり,常に唾液が気管に垂れ込むために,喘鳴がひどくなり呼吸も苦しくなることがあります.
<喉頭気管食道裂>
誤嚥が問題になる代表的な疾患です.喉頭・気管と食道の間は,壁があり分かれていますが、喉頭気管食道裂では、この壁が裂けこんでいます.裂け込みの長さによって,呼吸や嚥下の状況は異なります.裂けている部分が声帯に達していない時は,軽い喘鳴があってもミルクをむせたりしないことも多く,手術が必要ない場合もあります.声帯周辺や声帯を少し超えて裂けている時は,誤嚥がひどくなりますので,裂け目を閉じる手術が必要になります.稀に声帯を大きく超えて裂けていることがありますが,この場合は,状況に応じて対策を立てていくことになります.
*喉頭顕微鏡下手術
当院では,このような喉頭の疾患に対して喉頭顕微鏡下手術を行っています.口の中に金属の筒を入れて固定し,顕微鏡で拡大して見ながら,この筒を通して手術を行います.症状が強い場合には,複数回の手術が必要になることも多くありますが,繰り返し手術を行いやすいことも特徴です.気管切開が必要な疾患では,頸部を切開して手術を行いますが,喉頭顕微鏡を併用して手術を行うことも多くあります.

ラリンゴ画像

2.肋軟骨移植

声門下狭窄などの気道狭窄に対して肋軟骨を切除し、狭い部位に移植し気道の拡大を行う手術です。

3.気管狭窄・軟化症

*先天性気管狭窄症とは
先天性気管狭窄症は,生まれつき気管が細い病気です.正常の気管は全周の80%の気管軟骨と20%の膜様部と呼ばれる薄い膜で出来ておりますが,この病気の大部分は膜が欠如しており,軟骨が気管の全周を占めておりま す.気管は空気の出し入れを行う道に相当します.正常の気管は首を動かしても軟骨の輪を繋いでいる膜がジャバラとして働き,空気の出し入れが邪魔されることはありません.また大きな呼吸をすると膜様 部が延び気管の内腔を大きく開き,空気の出し入れを容易にします.先天性気管狭窄症ではこれらの働きが大なり小なり障害されます.先天性気管狭窄症の患者様では,先天性心疾患を合併することがよくあります.
*症状と診断
狭窄の程度や狭窄の長さ,また気管のどこの部位に狭窄が起きるかによって病気の発生時期や重症度が変わってきます.内腔が極端に細い場合は呼吸困難のために生後すぐ発見されますが,比較的軽度なら喘鳴や軽い陥没呼吸がある程度のものや,ほとんど無症状に推移す ることもあります.こういった症例は風邪の時などに突然症状が悪化して見つかります.多くの場合この病気は突然呼吸困難に陥り,気管内にチューブを入れようとして入らな いため見つかります.狭搾の程度はさまざまですが,狭窄の長さと狭窄のある部位は治療方法を決めるときに重要になります.狭窄の長さが長いほど,狭窄の部位が気管の下にあるほど病気の程度は重いと考えられております.診断はレントゲン検査やCTなどの画像検査を行いますが,血管造影や内視鏡などの特殊な検査方法も必要なことがあります.心疾患を合併することが多いので,心臓の精査も必要になります.

気管狭窄画像

気管狭窄の患者様のCT黄色で示した部分の気管が狭くなっています
*治療
この病気は我々小児外科医が扱う疾患の中でも,治療の難易度が非常に高いもののひとつです.手術の適応は狭搾の程度,症状などから決定します.狭搾の範囲が短い場合は,狭搾した部分を切除し,気管をつなぎ直す手術を行います.狭搾範囲が長い場合は気管形成と呼ばれる手術を行います.気管形成手術は高難度の手術であり,多くの場合手術中に人工心肺が必要になること,心疾患の合併が多いこと,術後に厳密な呼吸・循環管理が必要なことから,十分な経験を持った小児外科,心臓血管外科,麻酔科,循環器,集中治療のチームがあって初めて行うことができます.そのためこの手術は日本でも限られた施設しか行うことができません.当院では各科の連携によって,良好な治療成績をおさめることができています.
同様の症状を起こす疾患として,喉頭軟化や気管軟化がありますが,これらの疾患でも時に手術で症状が軽快することがあります.原因のはっきりしない呼吸症状があれば,気道疾患の対応に熟練した小児外科施設に相談することをお勧めします.
*スライド気管形成とは
先天性気管狭窄症の患者様で,狭搾の範囲が長い場合に行う手術です.気管狭窄部の中央を離断し,上部気管の後壁と下部気管の前壁を縦切開し,両者をスライドさせ吻合します.これにより気管の外周は倍となります.術中に空気の通り道である気管を切り離すので,人工心肺が必要になります.心臓血管外科の協力で人工心肺の装着を行います.また,手術が必要な心疾患がある場合,気管形成と同時に心臓の手術も行うことがあります.
スライド気管形成は気管というデリケートな部位を再建する手術のため,合併症の頻度も高く,高度な技術,周術期管理が必要です.主な合併症としては,吻合部肉芽,縫合不全,壊死性気管支炎,気管軟化,感染,出血などがあります.これらによる影響を未然に防ぐために術後も集中治療室で厳重な管理が必要となります.特に気管が左右に分かれる気管分岐部に狭搾が残る場合など,術後気管切開が必要になる場合もあります.

スライド気管形成画像

スライド気管形成術

手術前後画像

手術前後の内視鏡

4.レーザー治療

通常の内視鏡的な手術器具では処置が困難であった、気管内や気管支内の肉芽(良性のできもの)や狭窄の治療に、喉頭顕微鏡下や内視鏡下にレーザー光線を用いた治療を行っています。

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