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診療科

口唇口蓋裂

最終更新日:2022年11月20日

口唇裂・口蓋裂のお子さんと、そのご家族が 健やかな生活を送っていただけるようにお手伝い致します。

静岡県立こども病院口蓋裂センターでは、お子さんが産まれる前から、成人し社会に出るまで、おこさんやご家族に寄り添った治療を行っております。当院では口唇口蓋裂治療に必要な全ての治療が出来る体制が整っています。
口唇口蓋裂のおこさんの治療目標は、成長発達段階で整容的・機能的に成長して行くことのサポート、そして最終的には社会に羽ばたいていくうえで、出来るだけ困らないようにすることです。そのためには、適切な治療を適切なタイミングで行う必要があります。治療には、形成外科、耳鼻科、歯科、言語リハビリだけでなく、遺伝染色体科、小児科、麻酔科、集中治療科など分野横断的な小児医療の総合力が必須になります。
当院は静岡県唯一の小児専門病院であり、こどもの医療については万全な体制が整っております。更に当院では口唇口蓋裂のお子さんにより良い治療を行う為に、1987年に形成外科・歯科・言語リハビリ・耳鼻科による口唇口蓋裂診療班が発足しました。現在では静岡県全域、山梨県、愛知県西部からも多くのお子さんが来院し、総合的な口唇口蓋裂治療を行っております。
出生前診断で口唇口蓋裂であることがわかったら、出産してお子さんに口唇口蓋裂があった場合は、当院口蓋裂センターに御連絡ください。形成外科、耳鼻科、歯科を中心とする関連各科で、哺乳についてやそれぞれの治療について説明させて頂きます。


色々わからないことや不安なことなどあると思います。受診に際して質問などありましたらメールで御連絡頂ければと思います。

ch-keisei@i.shizuoka-pho.jp
静岡県立こども病院 頭蓋顔面・口蓋裂センター 形成外科 口蓋裂認定師 加持秀明

口唇口蓋裂とは

口唇裂・口蓋裂は、口唇または口蓋に裂のみられる疾患の総称です。裂のみられる部位により、唇裂、唇顎裂、口蓋裂、唇顎口蓋裂と呼ばれます。

裂の部位による分類
唇裂:
唇が割れている状態をいいます。上唇に軽いくびれがあるだけで、鼻もほとんど変形していない程度から、上唇が鼻の孔まで完全に割れていて、鼻も強く変形している程度まであります。
唇顎裂:
唇が割れているだけでなく、歯茎まで割れている状態です。顎裂とは歯が生える歯茎の部分が割れている状態です。顎裂の幅が広ければ鼻の変形も大きくなります。
口蓋裂:口の中の上あごが口蓋垂(のどちんこ)まで割れている状態をいいます。口と鼻の間を隔てている境が無く、口の中と鼻の中がつながっています。
唇顎口蓋裂:
唇から歯茎・上あご含め口蓋垂(のどちんこ)をまで割れていて、唇顎裂と口蓋裂が合併している状態をいいます。

※唇裂と唇顎口蓋裂は、それぞれ右もしくは左の片側にだけ生じている場合と、両側に生じている場合があります。通常、片側唇裂、片側唇顎裂、片側唇顎口蓋裂、両側唇裂、両側唇顎口蓋裂といいます。

発生原因
口唇や口蓋は、そのもとになる複数の「突起」が、妊娠初期にそれぞれ上方や側方から中央部に伸びて結合することにより形作られてきます。口唇は受精後8週(妊娠3ヶ月)頃に、口蓋は12週(妊娠4ヶ月)頃に完成しますが、この過程でうまく結合できない部位があった場合に“すきま”として残ってしまうことにより唇裂・口蓋裂になるのです。しかしながら唇裂・口蓋裂の発生を引き起こすたった一つの原因があるわけではありません。一般に、妊娠中の様々な環境要因や設計図としての様々な遺伝要因が重なり合って起こると考えられており「多因子疾患」と呼ばれています。先天性心臓病など生まれながらの先天性疾患の多くはこの“多因子疾患”によるものです。環境要因の中では妊娠中の喫煙・多量飲酒・糖尿病などは発症の危険因子となることがわかっています。一方で妊娠前から妊娠初期の葉酸の摂取は発症の予防効果につながると考えられています。 

発生頻度
日本では、出生するお子さんの約600人に1人(0.16%)で唇裂/口蓋裂が起こります。唇裂/口蓋裂だけが単独で起こるのはこのうち70%くらいで、残りの30%くらいは、身体のその他の部位の異常(先天性心疾患など)も合併します。すでに唇裂/口蓋裂を持っている方がきょうだいや他の血縁者にいらっしゃる場合は、そのご家族の中では“少し”発生頻度が高くなることが知られています。一方、唇裂/口蓋裂以外に合併症がある場合は全く別の原因が存在している可能性があり発症頻度の情報が異なってくることがあります。次のお子さんを考える時などは、“遺伝カウンセリング”においてより具体的な情報や相談を受けることができます。

出生前診断から成長終了までの治療の流れ

口唇裂・口蓋裂の治療においては、見た目の問題だけで無く、言葉や歯ならび・咬み合わせの問題を含め、集約的な治療を行っていく必要があります。また、口唇裂・口蓋裂以外の合併症などがある場合は、こども病院の他科を受診していただき、お子さんを総合的に診ていきます。

<出生前>
出生前診断を受けられた親御さんに出生前の説明を行っております。生まれてくるあかちゃんの為に、あらかじめ準備できること、生まれた後の治療スケジュール、ご心配なことがあれば納得のいくまで説明させて頂きます。また、口唇口蓋裂の状況によっては、唇の手術の前に、術前顎矯正治療を行う場合があります。装置の作成、定期受診などの説明も必要に応じて併せて行います。口唇形成術は、成長次第ではありますが、生後3-4ヶ月で行います。出生前の段階で早めに手術日を仮に押さえておく為にも、出生前診断された場合は早めの受診をお勧めいたします。
受診には紹介状が必要になりますので、当院形成外科宛に産婦人科で作成してもらって下さい。

<生後から2歳まで>
口唇裂がある場合は、3-4ヶ月、体重5kg以上を目安に唇の手術(口唇形成術)を行います。唇顎口蓋裂など口唇裂に口蓋裂が合併している場合は、術前顎矯正治療を行う場合があります。片側の場合と、両側の場合で治療スケジュールが違います。術前顎矯正プレートによる覇矯正治療が適応になる場合があります。術前顎矯正治療を行った場合は、2週間に一度の調整の為の外来受診が必要になります。

口蓋裂がある場合は、1歳半頃に上あごの手術(口蓋形成術)を行います。口蓋形成術は、将来的な成長発育などの影響を考慮して、出来るだけ低侵襲で行っています。

唇顎口蓋裂の場合は、生後2歳までに、口唇形成術(3ヶ月)と口蓋形成術(1歳半)の2つの手術をうける必要があることになります。

<2歳から小学校入学前まで>
口蓋裂のあったお子さんでは、正しい発音をしているかどうか半年毎に外来で経過観察を行います。必要に応じて検査を行います。この検査の結果次第で、言語訓練もしくは手術の追加が必要かどうか決定します。小学校入学までに正しい発音で話せることを目標にしています。
顎裂(歯茎が割れている)のあるお子さんでは、顎裂部に歯が生えてきません。顎裂部に骨を移植することで、歯を適切な位置に生えるようします。可能であれば就学前に顎裂部に対して骨移植を行います。ただし、顎裂部の状況により出来ない場合あり、この場合は小学校入学後に行います。


<小学生>
お子さんの状態によって、半年から1年に1回の定期健診となります。
口蓋裂のあったお子さんでは、一度正常な発音を獲得しても、成長に伴い徐々に悪化してしまうお子さんもいらっしゃいます。当院ではそのようなお子さんを見逃さない体制が整っており、気がつかないうちに発音に悪い癖がつくことや、不明瞭になることを防ぎます。
小学校入学前までに、顎裂骨移植術が出来ていないお子さんは、顎裂骨移植を行います。

<中学生>
永久歯(大人の歯)が生えそろい、歯の矯正治療が必要なお子さんは最終的なゴールを見据えて治療スケジュールを再確認します。歯の矯正治療の為に外科矯正手術が必要かどうかの判断はこの頃に行います。言語評価も毎年継続して行います。

<高校性>
4歳から3年ごとに行ってきた発音検査は16歳で最後になり、問題無ければ終了になります。咬み合わせおよび顔貌改善の為に外科矯正手術(上下顎骨きり術)を行う場合は成長がある程度終了した16歳以降で行います。
歯科矯正治療が最終段階に入ります。唇・鼻の変形や傷跡に対して、口唇鼻形成術など整容的な最終手術を行います。

※16歳までの言語評価については、口蓋形成術以降は、2歳から小学校入学前は半年に一回、小学校入学以降は1年に一回の言語など機能面の定期健診があります。その間、必要に応じて形成外科で手術などの治療が入ります。口蓋裂センターの外来は、病院の同じエリアにまとまっておりますので、わかりやすいと思います。

<高校卒業以降>
事情により高校性のうちに終わらなかった場合などは、高校卒業後も当院で手術を行う場合があります。

手術・入院期間について

当院は小児専門病院であり、手術時の入院に際して、ご家族の付き添いは必要ありません。付き添い希望の場合は、勿論付き添うことも可能ですが、その場合は個室となりますのでご承知置き下さい。

<口唇形成術>
生後約3ヶ月で唇を閉じる手術を行います。口・鼻の周り左右のバランスが整うように縫い合わせます。唇周囲の筋肉も正常な位置関係になるように縫い合わせます。全身麻酔で行います。入院期間は1週間程度です。

<口蓋形成術>
口蓋裂の手術時期は、おしゃべりが始まる前の1歳半頃です。上あごの割れている部分の左右にある粘膜を中央に寄せて縫い合わせます。また、口蓋裂では発声するとき・物を飲み込むときに重要な働きをする筋肉も割れていますので、これらの筋肉もしっかりと縫い合わせます。成長を考慮し、出来るだけ低侵襲に手術を行います。口蓋形成術の術後は小児集中治療室に1-2日間入院となります。理由は、気道に近い部位の手術であり、術後気道閉塞など合併症を最小限にするためです。合併症のリスクが無くなった段階で一般床へ転棟します。入院期間は全て合わせて2週間程度です。

<口唇・鼻の修正手術>
口唇裂のお子さんで、唇や鼻の変形が目立つ場合は、小学校に入る前に修正を行うこともあります。手術は全身麻酔で行いますが、術後1泊の2日間か、もしくは日帰りとなります。

<口蓋の二次手術(咽頭弁形成術など)>
口蓋裂の手術後には約80〜90%のお子さんが、3〜4歳までにほぼ正常な発音が出来るようになります。しかし、中には発音に口蓋裂特有の癖が生じたり、開鼻声が残ることがあります。4歳時の発音検査の結果、発音訓練だけでは改善が見込めないと診断された場合に、口蓋の2次手術(咽頭弁形成術など)を行うことがあります。

<顎裂への骨移植術>
顎裂があることで、歯列弓(歯茎)の骨の連続が無いと、歯の矯正治療において、歯がきれいに配列出来ません。また歯列の安定性という面からも、骨の連続性が必要になります。当院では、出来るだけ小学校入学前に腸骨から顎裂部への骨移植を行っております。入院期間は6日間です。腸骨採取部は麻酔科で十分な鎮痛処置を行っていますので、疼痛については最小限になっております。

<外科矯正手術(上顎骨骨切り術、下顎骨骨切り術)>
口唇口蓋裂では、上顎の成長が悪くなることが多く、そのため受け口などの顎変形症になります。咬み合わせなどの機能面だけでなく、整容的にも上顎骨骨きり術、下顎骨骨きり術などの手術が必要になることがあります。
入院期間は1週間程度です。術後集中治療室に1日入院して、翌日には一般床へ転棟します。

<口唇鼻形成術>
口唇口蓋裂治療の最終的な仕上げの手術になります。口唇口蓋裂では成長に伴い、鼻や口の変形が顕著化することがあります。成長が終了した段階で、その子の症状や、整容的希望に応じた手術を行います。入院は術後1泊の2日間になります。