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子供の心臓病(病院別)死亡率(記事)

最終更新日:2014年11月13日
生まれてくる子供の中には、もともと心臓に異常のある「先天性心疾患」の子がいる。子供の心臓病のほとんどがこの病気だ。

表2は、本誌のアンケートに協力いただいた40病院のうち、先天性心疾患の手術症例が100例以上の病院を北から順に並べたものである。ここに挙げた病院は、週2~3回以上小児心臓病の手術をしている、各地方の中核病院だ。

表2では、生後28日未満の新生児、28日~1歳未満の乳児と1歳以上の子供の三つの時期に分け、それぞれの施設の症例数と手術死亡率をまとめた。先天性の心臓病にはさまざまな種類があり、生まれてすぐに手術をしなければ死んでしまう病気もある。一般的に、体が小さい新生児の手術が最も難しく、新生児と乳児の手術数が多い病院が、レベルの高い病院と言われる。

先天性心疾患の場合、症例数そのものが少ないため、1例亡くなっただけでも死亡率が高くなってしまう。新生児の手術で死亡数の多かった兵庫県立こども病院の山口眞弘副院長は言う。

「この6例は脾臓のない無脾症候群という病気など、いずれも助かるかどうか分からないけれども手術せざるを得なかった重症例だ」

ほかの病院の死亡例も、重度で複雑な心臓奇形の症例だった。

一方、先天性心疾患のうち患者の数が多い「動脈管開存症」「心室中隔欠損症」「心房中隔欠損症」「ファロー四徴症」については、ほとんど手術で助かる時代になった。では、こういった死亡率の低い病気は、どこで手術を受けても同じなのか。東京女子医大附属日本心臓血圧研究所の中澤誠教授(小児科)は、こうアドバイスする。

「このような病気の手術であっても、心臓病の手術を受けるからには、ここに挙げられたような症例数の多い病院を選んだ方がよいと思う。現に、先天性心疾患の手術が少ない病院で、心室中隔欠損の患者が死亡するケースもある」

ましてや、複雑で重症な先天性心疾患となれば経験豊富な病院の方が助かる確率は高い。特に、心臓外科医が属する日本胸部外科学会の1999年の学術調査で、新生児の手術死亡率が60%と高かったのが「左室低形成症候群」という病気。左心房と左心室が発育不全であるため、手術をしなければ生後1ヶ月以内でほとんどが亡くなってしまう。

ところが、今回のアンケート調査で、静岡県立こども病院、岡山大学附属病院、福岡市立こども病院の3病院で、この病気の手術救命率が極めて良いことが分かった。表3に挙げた年間執刀200例以上(子供の症例)の外科医3人と、何よりそれを支える医療チームの努力の賜である。この3病院に改めて最近5年間(静岡は3年間)のデータを出してもらったところ、3病院では手術で70~80%を救命。1年後の生存率も60~70%だった。

すべての複雑新奇形について言えることだが、どの程度体重が軽く、重症な子供まで手術をするかは、病院によって異なる。なかには、ある病院で「手術しても助からない」と言われても、別の病院の手術で難なく助かることもあるという。

最近は、妊娠中に胎児に先天性の心臓病があるのか診断ができるようになってきた。生まれた直後に手術が必要になるようなケースでは、妊娠中に病院を選んでその病院の近くに移動するという選択も可能なのである。