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慢性腎臓病(CKD)について

最終更新日:2016年12月7日

はじめに

腎障害といってもピンと来なくて、透析というともうダメだという強いマイナスイメージがあります。これが腎疾患医療の現実でしたが、近年は、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKDと略す)という概念が広まり、腎臓病診療が変化してきました。

CKDは腎機能低下もしくは蛋白尿が3か月以上持続して認められるものを言います(※図1参照)が、日本腎臓学会からの報告によると、日本国民の約8人に1人がCKDとされ、大変に頻度が高い(※図2参照)ことがわかっています。また、CKDの患者さんは、そうでない患者さんよりも、将来的に透析治療が必要となることが多いばかりでなく、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患を起こす危険も高まる(※図3参照)ことがわかっており、その重要性が広く認識されるようになりました。

図1:CKDの定義、診断、重症度分類

(図1)CKDの定義、診断、重症度分類

図2:日本におけるCKD患者数

日本におけるCKD患者数(%)(20歳以上)

図3:2型糖尿病患者における脳卒中、冠動脈疾患および全心血管イベント発症の相対危険率

図3:2型糖尿病患者における脳卒中、冠動脈疾患および全心血管イベント発症の相対危険率

CKD診療の実際

CKDは、早期には検査の異常のみで、自覚症状を認めません。したがって、定期健診や他の病気で血液検査・尿検査をしたときに発見されます。このときに、検査の異常を軽視しないことが大切です。以下に、実例を挙げます。
Aさん(72歳、男性)は、近くのB内科で、仕事をやめてからは久しぶりに健康診断をしてもらった。すると、血液検査で腎臓の働きが落ちているといわれた。Aさんは、30代のときに胃潰瘍の手術を受けてからはずっと健康で、特に症状はなかったが、勤めていたころの検診でも、腎臓については注意だよと言われていたことを思い出した。Aさんはその近くの内科医の勧めで、県立総合病院を受診することになったが、まあ、たいしたことはないだろうと高をくくっていた。

開業医のB先生は、Aさんの検査結果をみつめていた。血清クレアチニン濃度が1.54 mg/dLと高値である。血清クレアチニン濃度の基準値が0.6-1.1mg/dLであるから、それほど高いように見えないが、この測定結果から推算糸球体濾過量(eGFR)を計算すると、35ml/min/1.73m2となり、腎機能は1/3程度まで低下していることになる。糖尿病や高血圧はないし、元気な方ではあるが、尿蛋白が1+であることも気になる。やはり腎臓専門医に診てもらった方が良さそうだと判断して、B先生は紹介状を書き、県立総合病院の腎臓内科にAさんが受診できるように予約をとった。

推算糸球体濾過量(eGFR)とは

一つの腎臓には約100万個の糸球体があります。糸球体では、毛細血管が球状にかたまっており、効率よく血液を濾過して尿のもとをつくる構造になっています。すなわち、糸球体でどのくらいの血液が濾過されているか(糸球体濾過量)は、腎臓の機能をみることにほかなりません。この糸球体濾過量を調べる方法はいくつかありますが、いずれも手間がかかるものです。そこで、日本人の多数のデータを解析して、性別と年齢と血清クレアチニン濃度(あるいは血清シスタチンC濃度)から、予想される糸球体濾過量の計算式が考案されました。これが、推算糸球体濾過量(eGFR)です。eGFRは採血をするだけで算出されるので、簡便に腎臓の機能を調べる良い方法です。一方で、体格・活動量や薬剤服用による誤差があることもわかっており、値の解釈に注意が必要なこともあります。
日本人のGFR推算式
男性eGFR-creat (ml/min/1.73m2)=194 X Cr-1.094 X Age-0.287
eGFR-cys (ml/min/1.73m2)=(104 X Cys-1.019 X 0.996age)-8
女性eGFR-creat (ml/min/1.73m2)=194 X Cr-1.094 X Age-0.287 X 0.739
eGFR-cys (ml/min/1.73m2)=(104 X Cys-1.019 X 0.996ageX 0.929)-8

県立総合病院の腎臓内科のC先生は、B先生からの紹介状を読んで考えていた。どうやらCKDのようだが、原因はなんだろう?Aさんを診察しても特に異常はないし、症状もない。C先生は、Aさんに、血液検査と尿検査に加えて、超音波検査と蓄尿検査もやってもらうことにした。超音波検査では、腎臓の形状や大きさに異常はなかったが、血流シグナルが乏しかった。蓄尿検査では、クレアチニンクリアランスは48 ml/min/1.73m2であり、eGFRよりも良い値であったが、尿蛋白が0.35g/日と少し出ていた。そういえば、Aさんには喫煙歴があり、血液検査でLDL-C 181mg/dL、UA 8.1mg/dLと、コレステロールや尿酸が高値である。高血圧や糖尿病こそないが、動脈硬化の危険因子が複数あり、Aさんは腎硬化症であるとC先生は判断した。Aさんの蓄尿検査結果からの推定塩分摂取量が10.4g/日と少なくなかったので、C先生は、Aさんに禁煙するように指導して、Aさんへの減塩食の食事指導を病院の栄養士に依頼し、コレステロールと尿酸を下げる投薬をお願いしますとB先生宛の報告書に書き、Aさんの半年後の外来予約をとった。

クレアチニンクリアランスとは

まず、クレアチニン(Cr)とは、体の筋肉で生じる代謝産物で、常に体内で産生されています。クレアチニンは老廃物であり、糸球体で濾過されて尿へ排泄されます。したがって、どのくらいクレアチニンが尿へ捨てられたかを調べると、糸球体濾過量がわかります。患者さんに24時間分の尿をためてもらい(蓄尿といいます)、その尿中のクレアチニン量を血清クレアチニン濃度で割ることで計算できます。ただし、クレアチニンは尿細管という腎臓の部分で少し分泌されることでも、尿中に排泄されます。したがって、実際の糸球体濾過量よりもクレアチニンクリアランスが大きな値をとりやすいことに注意が必要です。

Crクリアランス(ml/min)=(尿中Cr濃度 × 一分間尿量)/血清Cr濃度

腎硬化症とは

糸球体が障害されて、文字通り、糸球体が硬く変化して血液濾過ができなくなった結果、腎機能が低下する病態です。高血圧などが原因で、腎臓の細い動脈に動脈硬化性病変を生じ、そのために血流が悪くなり、糸球体も硬化していきます。糸球体にさまざまな原因で炎症を生じる、糸球体腎炎という病態とは区別されます。透析になる原因疾患としては、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎についで3番目に多い疾患です。

推定塩分摂取量とは

蓄尿検査の結果、一日あたりのナトリウム排泄量も調べられます。病状が安定していれば、食べた塩分量と排泄された塩分量は、等しいので、ナトリウム排泄量から塩分摂取量が推定できます。食塩の分子式はNaClですから、分子量から計算式は以下のようになります。過剰な塩分摂取は、腎臓に余計に濾過をさせることになり、高血圧を助長しますので、CKD患者での塩分摂取量は一日あたり6gが目標です。日本人の平均塩分摂取量が一日あたり10-12gとされていますので、約半分にする必要があります。

推定塩分摂取量(g/日)=蓄尿検査でのNa排泄量(mEq/日)/ 17
もしくは=蓄尿検査でのNa排泄量(g/日) × 2.54
Aさんは、県立総合病院からの帰り道で考えていた。実際に、腎臓の専門の先生から、腎臓の働きが40%程度しかないと言われると、ショックだった。健康には自信があっただけになおさらだった。先生は、早く見つかったし、十分に治療できるといっていたけど、本当だろうか。この先、どんどん腎臓が悪くなって透析治療が必要になったりしないだろうか。とにかく、食事に気を付けて、B先生のところにかかって薬をもらって、そして、好きなタバコもやめるしかないか、とつぶやいた。

B先生は、C先生からの診療報告書に目を通していた。なんだかよくわからないところもあるが、とにかく普通の動脈硬化対策をしなさいということのようだ。コレステロールと尿酸を下げることなら、B先生は得意分野である。それぞれ一つ、薬を選び、Aさんに処方することにした。Aさんに投薬を始めることを告げると、ハイハイと二つ返事が返ってきた。無症候性の患者に投薬を開始するときは、いつも説明に苦労するのだが、ずいぶんと物わかりがいい様子だ。やはり専門医にかかったことが良かったのか、とB先生は思った。

半年後、C先生は、Aさんの検査結果に満足していた。クレアチニンクリアランスは52 ml/min/1.73m2であり半年前より少し良いぐらいである。尿蛋白は0.15g/日と減少して、推定塩分摂取量も6.9g/日と減っている。この調子であれば、Aさんの腎臓の予後は悪くなさそうだ。

B先生も、Aさんの経過に満足していた。コレステロールと尿酸が、それぞれ、LDL-C 87mg/dL、UA 6.7mg/dLとしっかり低下して、腎機能が維持できている。これも、自分の投薬のおかげだと思えば、なんだか誇らしく感じた。

Aさんも、自分の経過に満足していた。減塩もがんばったとほめられたし、腎臓もなんだか良くなっていると言われた。尿酸もコレステロールも下がったし、これで長生きできそうだ。あとは、二人の先生に言っていないが、タバコをまだ少しだけ吸っているのをどうするかだが。

CKDパスについて

上記のようにCKD診療では、かかりつけ医と病院医が、二人とも主治医となって治療にあたることが少なくありません。これは、双方の長所を生かしたやり方です。患者さんにとって、かかりつけ医は相談しやすく、血圧や、肥満や、血糖、コレステロール、尿酸といったCKD進行のリスクとなるものの普段の管理はかかりつけ医が主体となって行った方がうまくいきます。一方、蓄尿検査での腎機能の詳細な評価、CKDの原因精査、CKDの合併症の検索、栄養指導といった特殊性・専門性の高いことについては、病院でしかできないものもあり、病院医が主体となって行った方がうまくいきます。患者さんは、定期的に専門医からの精査や指導を受けることで、安心感も得られます。
このように、病院と診療所が連携してCKD治療を行っていくうえで、データの共有はかかせません。静岡市では、医師会と病院が協議のうえ、静岡CKDパスを作成して、かかりつけ医と病院での血圧や検査結果を同じ書式のうえに記載するようにしております。
当院では400名以上のCKDの患者さんが、これまでにこのCKDパス表を用いて、診療所と連携して治療を行っております。

静岡CKDパスとは

かかりつけ医と病院医が、一人の患者さんを共同で診るうえで、情報を共有するためのしくみです。静岡市医師会と静岡市内の腎臓専門医が中心となって作成しました。かかりつけ医、病院医ともに患者さんが受診されたときの、血圧、体重、検査結果、変更点などを記載して、相互に患者さんが受診するときに持参してもらいます。これにより、一人の患者さんの腎臓に関するデータの推移が、一枚のパス表のなかでわかるようになります。以下に、すでに登場した患者Aさんの例を挙げます。

静岡CKDパス

おわりに

CKDは早期発見と早期治療が大切です。また、腎臓病は治療できる疾患です。もし、健康診断で尿検査やeGFRに異常があれば、是非、かかりつけ医に相談しましょう。