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単心室症

最終更新日:2014年12月17日
チアノーゼ(血液中の酸素の濃度が低い状態)をもった子供たちは、心臓の中で、全身から戻ってくる酸素濃度の低い血液(静脈血)と肺から戻ってくる酸素濃度の高い血液(動脈血)が混ざっています。このチアノーゼをなくすために二つの手術方法があります。

一つは、心臓の壁に穴が開いていたり(ファロー四徴症など)、心臓につながる血管に異常があり(総肺静脈還流異常症など)、かつ心臓を作る4つの部屋(左右心房、左右心室)はしっかりしている場合は、その異常部位のみを、穴を閉じたり、血管をつなぎ直すことにより、解剖学的により正常に近い状態に直します。これを解剖学的根治手術と呼びます。

それに対して、心臓を構成する部屋、特に左右心室の内どちらかが十分な大きさがない場合、ないしは最初から一つしかない単心室の場合は、解剖学的に二つの部屋に分けて修復するのは困難です(三尖弁閉鎖、左心低形成症候群など)。この場合は、心室を二つに分けるのではく、その心室を一つの部屋と考え、全身へ血液を送り出すために使います。
では、肺への血流はどうするのか?

この場合、全身から心臓に戻ってくる血管(上大静脈、下大静脈、時に肝静脈)を、心臓から切り離し、肺につながる血管(肺動脈)に直接つなぎ、静脈血が肺へ直接流れるようにします。心臓には肺からの動脈血だけが戻ってきます。これで、静脈血と動脈血が心臓の中で混ざらず、チアノーゼが起こりません。これを機能的根治手術と呼び、一般的にフォンタン手術[Fontan 手術]と呼びます。またフォンタン手術の準備手術として、上半身の血液だけを肺へ直接戻す手術を両方向性グレン手術[Bi-directional Glenn shunt]と呼びます。これらの手術を総称して右心バイパス手術とも言います。

これらの手術の成功の決め手は、心臓のポンプ機能が肺血流に影響しないため、肺で血液が流れやすい(肺血管抵抗が低い)ことが必須となります。また肺の血液は心臓が拡張するときに心臓に吸い込まれますから、血液を吸い込む心臓の力が強い(コンプライアンスが良い)ことも影響してきます。

生まれてすぐの赤ちゃんの肺は、生理的肺高血圧という血液の流れにくい状態です。ですから生まれてすぐには、右心バイパス手術は出来ません。そのため、少なくとも流れやすくなる生後3ヶ月から半年は、他の方法で肺へ血液を送ります。その方法が、全身に行く動脈と肺動脈を人工血管で繋ぐシャント手術、元々ある肺動脈の太さを調節をする肺動脈絞扼手術(肺動脈バンディング)、そして左心低形成症候群ではノーウッド手術となります。こども病院のノーウッド手術の成功率は80%を超えています。これらの詳細は別にご紹介します。中には手術を必要とせず、この時期を乗り切ってくれる赤ちゃんもいます。

さて、生まれてすぐの大変な時期を乗り切ってくれた赤ちゃんには、ようやく右心バイパス手術を受けてもらうことになります。
生後3ヶ月から半年後に、まず上半身の静脈血だけを直接肺に戻す両方向性グレン手術を行います。この時、前回手術のシャントや太さを調節した肺動脈は切り離し、肺血流は上半身からの静脈血だけにします。この手術では、まだ下半身の静脈血は心臓に戻り、肺からの動脈血と混ざりますから、チアノーゼは治りませんが、乳児期の赤ちゃんの頭は体に占める割合が相対的に大きく、上半身の静脈血だけが肺に流れても、日常生活に支障のない酸素の取り込みが出来ます。

また両方向性グレン手術までは、心臓は体へ行く血液と肺へ行く血液の両方を送り出していたのですが、この手術により、心臓は肺への血流を負担する必要が無くなりますし、心臓に直接戻る血液量も減りますので、心臓の負担が減り、心機能がよくなります。

右心バイパス手術が必要な心臓の多くは、房室弁という、心房と心室の間の弁が悪く、心室から心房へ逆流をおこすことがあります。こども病院ではグレン手術のときに、ないしはその前に、悪い弁に対して手術を行い(弁形成術)、心臓の負担を少なくするようにしています。

また左右の肺動脈がバランスよく成長してくれないときには、静岡こども病院坂本科長が開発したintrapulmonary septationという新しい手術を行い、バランスよく肺血管が成長するように工夫し、なるべく良い状態で次の段階に進めるようにしています。

両方向性グレン手術を乗り切ってくれると、いよいよフォンタン手術です。静岡こども病院では、生後11ヶ月から1歳位に、心臓カテーテル検査で、肺、心臓の評価をし、早ければ1歳前後でフォンタン手術を行います。この時期は他の施設より少し早いのですが、これは成長著しいこの時期のお子さんからより早くチアノーゼをなくしてあげたいと言う考えからです。
フォンタン手術にはいろいろな方法がありますが、我々は、ゴアテックスの人工血管を使い、下大静脈と肺動脈をつなぐ方法を行っています。(Extracardiac Fontan手術)。中には人工血管を使わずに肺動脈と下大静脈を直接つなぐことが出来る子もいますので、そのようなお子さんには、なるべく人工物を使わない手術方法を行います。

さてフォンタン手術が終わり、チアノーゼが無くなり、他のこどもたちと一緒に遊べるようになる訳ですが、フォンタン手術後は、静脈が直接肺に戻るため、通常の状態より静脈圧が高くなり血液の流速が遅くなります。また凝固系と呼ばれる血液を固める力の一部に異常を来すことがあります。このため、血液が血管の中で少し固まりやすくなるため、手術後は、抗血小板剤というお薬を飲み続けてもらうことになります。ただし、特に日常生活に支障を来すものではありません。

以上フォンタン手術について説明しましたが、詳しいことをお聞きになりたい方、質問のある方は、いつでもご連絡ください。ご質問にお答えします。