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ロス手術

最終更新日:2014年12月19日
一言でいえば、 「大動脈弁の病気に対して、自分の肺動脈弁を大動脈弁に入れ換えて使ってしまいましょう。」という術式です。

ロス手術は主に大動脈弁の疾患(大動脈閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症)に対して行われます。自分の肺動脈弁を大動脈弁に入れ換えて使用する手術です。大動脈弁の疾患に対しては、弁形成術、置換術(生体弁、機械弁)などがありますが、ロス手術の最大の特徴は、「大動脈弁として、成長の可能性のある、自己肺動脈弁を使用する」という点です。ただし、ロス手術は入れ換えのために使用してしまった肺動脈弁には人工物を補填するので、「人工物を使用しない手術」ではありません。

具体的には、自分の肺動脈弁を、肺動脈の壁を付けた状態で筒状にくり抜き、これを大動脈弁のところに移植します。肺動脈弁の部分は人工物や自分の心臓を包んでいる膜(心膜)、または動物の心膜などを用いて再建します。当前のことながら、ロス手術が行えるためには、自分の肺動脈弁に異常がないことが必須となります。また、肺動脈弁を大動脈弁と置き換えるために二つの弁の大きさが大きく異なっていると問題となる場合があります。ただ、単純に肺動脈を弁ごと大動脈に移植するだけではなく、もともと大動脈の根元から起始している、心臓自身に血液を供給する「冠動脈」も新たに移植した肺動脈に移植しなおさないとなりません。

次にロス手術の利点、欠点を簡単にまとめました。
利点
  • 大動脈弁の手術としてロス手術以外に人工弁または生体弁置換術がありますが、現在使用できる最も小さい弁は16mmしかありません。小さいお子さんの場合16mmという人工弁が大動脈に入らない場合があります。ロス手術は自分の肺動脈弁を使用するため、16mm以下の大動脈弁でも手術可能となります。
  • 人工弁はもちろん成長することはありませんが、ロス手術の場合は移植した自分の肺動脈弁が成長すると考えられています。よって、弁置換術にくらべて大動脈弁の再手術の可能性が低いと考えられています。
  • 自分の弁を使用するため、抗凝固療法(人工弁の場合、弁の周囲に血栓を作らないように血液が固まりにくくするお薬を内服する必要があります)が必要ありません(ただし、肺動脈弁部の人工物によっては抗凝固療法が必要となる可能性もあります)。
欠点
  • 単純な大動脈弁手術と比較すると、大動脈と肺動脈両方の手術を行う、また冠動脈を移植するために手術侵襲が大きくなります。
  • 肺動脈は人工物に置換されるため、この部分の成長はありません。体の成長に伴って肺動脈部分の再手術は必要になる可能性があります。したがってある意味では、大動脈弁と肺動脈弁の2弁の疾患となってしまいます(ただし、肺動脈弁単独の再手術は、大動脈弁の再手術よりは手術リスクが低いと考えています)。


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