グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



診療科
ホーム  >  診療科  > 心臓血管外科  > 手術方法  > 心室中隔欠損症

心室中隔欠損症

最終更新日:2024年9月3日

心室中隔欠損症に対する外科治療

心室中隔欠損症に対する外科治療
心室中隔欠損症(Ventricular Septal Defect, VSD)は、左右の心室を隔てている壁(心室中隔)に孔が空いている心疾患です。欠損孔の位置によって、両大血管下漏斗部欠損、膜様部周辺型欠損、筋性部欠損に分類されます。この孔のために、肺から左心房に還ってきた血流の一部が、この孔を通じて左心室(圧が高い)から右心室(圧が低い)へ抜け、肺を再還流します。このため、心臓全体として処理する仕事が増え、肺動脈・左心房・左心室は拡大します(心不全)。肺にたくさんの血液が流れることで肺の血管が痛むことにもつながります(肺高血圧)。さらに、左心室から肺にたくさんの血流が逃げていると、全身に回るべき血流が少なくなる可能性もあります(成長障害)。
短絡する血液量は、欠損孔の大きさや肺血管抵抗(肺への血液の流れ易さ)、体血管抵抗(体への血液の流れ易さ)によって決まるため、大量の左右短絡のために乳児期早期から心不全症状を呈し体重増えないものから、短絡が少なく無症状で経過するものまで様々です。また欠損孔が自然閉鎖することもあります

左右短絡が多く、早期から心不全症状(多呼吸・哺乳不良・体重増加不良)を呈する場合は、早期の手術を計画します。小児期以降では、容量負荷所見があり(肺血流が全身血流の2倍が一つの目安)欠損孔の縮小傾向がない場合に手術を計画します。両大血管下漏斗部欠損に見られる、大動脈弁の逸脱や閉鎖不全を合併する場合は弁の病変が進む前に手術の適応となります。

手術は、体重が2.5kg以下や他臓器に障害がある場合は肺動脈絞扼術を選択する場合がありますが、多くは根治術(欠損孔の閉鎖)を行います。多くは胸骨正中切開によって心臓に到達し、人工心肺装置を用いて、一度心臓を停止し、心臓の中を直接観察して、欠損孔の位置を確認します。欠損孔の大きさに合わせたパッチ(一般的にePTFE膜(いわゆるゴアテックス)という人工のパッチを使用します)を、細かい糸と針で縫合して、欠損孔を閉鎖します。

術後の合併症としては、以下のようなものがあります。

1. 遺残短絡:あてたパッチが欠損孔を閉じきれていないために短絡が残ってしまうこと。VSDの周縁には脈を伝える大切な組織(刺激伝導系)や大動脈弁などが存在し、むやみに強力にパッチを縫い付けることが出来ない場合があるからです。少量の短絡であれば、その後の自然閉鎖が期待できますが、多量の短絡が確認された場合、再手術が必要となります
2. 不整脈:特に問題となるのが房室ブロックという不整脈です。脈を伝える刺激伝導系は肉眼では観察できないので、手術操作により刺激伝導系を損傷すればペースメーカーの植え込みが必要な場合があります。そのほか、術野の心不全などで頻脈を呈することがあります。
3. 三尖弁閉鎖不全・狭窄:膜様部周辺型欠損の場合には、欠損孔を閉鎖するのに三尖弁(右心房と右心室の間にある弁)の一部分を使用する必要があります。そのために三尖弁の変形を来たし、弁の閉鎖不全や狭窄を来すことがあります。逆流や狭窄の程度が強ければ、三尖弁に対する手術が必要になることがあります。

  • 部門紹介
  • 採用情報