左心低形成症候群(HLHS:Hypoplastic left heart syndrome)に対する外科治療戦略
"左心低形成症候群"はいわゆる“左心系”(左心房~僧帽弁~左心室~大動脈弁~大動脈)が”低形成”である疾患群ですが、基本的には左心室が全身循環を賄えない(大きさ、能力)状態のことと考えられます。ただし、左心室が成長し、全身循環を賄うことができるようになる可能性もあります。
その診断基準はなかなか難しいのですが、それぞれの部位で身長・体重から計算した正常基準値の70%程度の大きさがボーダーライン(最低ライン)ではないかと考えています。"使える"と判断した場合はいわゆる二心室治療を行います。一方、“使えない”と判断した場合(こちらの方が圧倒的に多いのですが)は、最終的には右心室が全身循環を賄う右心バイパス術(いわゆるフォンタン術)を目指し、単心室治療戦略をとります。
左心低形成症候群は僧帽弁、大動脈弁の形態・病態(狭窄、閉鎖)により4つに分類されます。中でもまだ比較的成長が期待できるのは僧帽弁からの流入・大動脈弁からの流出がある僧帽弁狭窄・大動脈弁狭窄のパターンです。一方、僧帽弁閉鎖・大動脈弁閉鎖タイプ(古典的HLHS)はかなり小さな左心室であることは少なくなく、この場合はいわゆるノーウッド手術を第一段階とする上記単心室治療戦略を取ります。
ノーウッド手術は、幾多ある心臓血管外科手術の中でももっともリスクの高い手術として知られてきました。その理由として1.そもそも新生児期手術でリスクが高い(全身臓器の未熟性など)2.術前状態がよくない(酸素化、心機能など)3.人工心肺時間、心停止時間が長い(術中の侵襲が大きい)4.術後の肺血流調整が難しい、などの理由が挙げられます。
ノーウッド手術のリスクを下げるため、さまざまな方法が導入されてきました。
まず両側肺動脈バンディング術を行い、新生児期手術をさけ、心臓以外の臓器の成熟を待ち術前状態を安定化させてからノーウッドに向かうこと。ノーウッド手術においては肺血流と全身血流のバランスを保つためシャントではなく、右室―肺動脈導管を用いること。あるいは導管やシャントにクリップをかけること。さらに、両側肺動脈バンディング術に加えて動脈管にステントを挿入し(ハイブリッド)、約3か月程度待機し、ノーウッド・グレンに向かう方法などが挙げられます。
ノーウッド手術、いや左心低形成症候群の治療成績は向上してきました。が、当然のことながら、正しい診断に基づき、よりよい治療戦略を立てることが生存率、あるいはquality of lifeをさらに向上させるために非常に重要であると考えています。
"左心低形成症候群"はいわゆる“左心系”(左心房~僧帽弁~左心室~大動脈弁~大動脈)が”低形成”である疾患群ですが、基本的には左心室が全身循環を賄えない(大きさ、能力)状態のことと考えられます。ただし、左心室が成長し、全身循環を賄うことができるようになる可能性もあります。
その診断基準はなかなか難しいのですが、それぞれの部位で身長・体重から計算した正常基準値の70%程度の大きさがボーダーライン(最低ライン)ではないかと考えています。"使える"と判断した場合はいわゆる二心室治療を行います。一方、“使えない”と判断した場合(こちらの方が圧倒的に多いのですが)は、最終的には右心室が全身循環を賄う右心バイパス術(いわゆるフォンタン術)を目指し、単心室治療戦略をとります。
左心低形成症候群は僧帽弁、大動脈弁の形態・病態(狭窄、閉鎖)により4つに分類されます。中でもまだ比較的成長が期待できるのは僧帽弁からの流入・大動脈弁からの流出がある僧帽弁狭窄・大動脈弁狭窄のパターンです。一方、僧帽弁閉鎖・大動脈弁閉鎖タイプ(古典的HLHS)はかなり小さな左心室であることは少なくなく、この場合はいわゆるノーウッド手術を第一段階とする上記単心室治療戦略を取ります。
ノーウッド手術は、幾多ある心臓血管外科手術の中でももっともリスクの高い手術として知られてきました。その理由として1.そもそも新生児期手術でリスクが高い(全身臓器の未熟性など)2.術前状態がよくない(酸素化、心機能など)3.人工心肺時間、心停止時間が長い(術中の侵襲が大きい)4.術後の肺血流調整が難しい、などの理由が挙げられます。
ノーウッド手術のリスクを下げるため、さまざまな方法が導入されてきました。
まず両側肺動脈バンディング術を行い、新生児期手術をさけ、心臓以外の臓器の成熟を待ち術前状態を安定化させてからノーウッドに向かうこと。ノーウッド手術においては肺血流と全身血流のバランスを保つためシャントではなく、右室―肺動脈導管を用いること。あるいは導管やシャントにクリップをかけること。さらに、両側肺動脈バンディング術に加えて動脈管にステントを挿入し(ハイブリッド)、約3か月程度待機し、ノーウッド・グレンに向かう方法などが挙げられます。
ノーウッド手術、いや左心低形成症候群の治療成績は向上してきました。が、当然のことながら、正しい診断に基づき、よりよい治療戦略を立てることが生存率、あるいはquality of lifeをさらに向上させるために非常に重要であると考えています。