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両方向性グレン手術

最終更新日:2024年11月21日
両方向性グレン手術

両方向性グレン手術は、いわゆる単心室治療戦略の第2段階に位置する手術です。
生後3ヶ月から半年の間(治療計画により時期が異なる場合があります)に、まず上半身の静脈血だけを直接肺に流すものです。当院では基本的に、(行っていれば)前回手術のシャントや太さを調節した肺動脈は切り離し、肺血流は上半身からの静脈血だけにします。両方向性グレン手術では、下半身の静脈血は心臓に戻り、肺からの動脈血と混ざりますから、チアノーゼは治りませんが、乳児期には全身血流に対する頭部の血流の割合が相対的に大きく、肺に流れるのは上半身の静脈血だけでも(≒酸素化に使われる血液が上半身だけでも)、多くは日常生活に支障のない程度の酸素の取り込みが出来ると考えています。ただ、必要があれば在宅酸素を使用することもあります。とは言え、程度によりますがチアノーゼには変わりなく、自力で改善させようとして側副血行路が生えることもあります(側副血行路手術参照)。

両方向性グレン手術前は、心臓は体へ行く血液と肺へ行く血液の両方を送り出していましたが、この手術により、心臓は肺への血流を負担する必要が無くなることに加え、心臓に戻る血液量も減りますので、心臓の負担は減ります。その一方で、上半身静脈血を直接肺に流す事により上半身静脈圧は術前に比べて上昇します。そのことにより術後一時的な上半身のむくみなどが見られる場合があります。まれにですがグレン手術から次の手術へ待機している間に肺動静脈瘻が見られる場合もあります。
肺動静脈瘻

肺に流れた静脈血は肺胞を通過することで酸素化されますが、この肺胞を通過する前に肺内の動脈-静脈間にできてしまう異常短絡路を肺動静脈瘻といいます。
これがあると酸素化されないまま肺を素通りする血流が増えるため、チアノーゼが増強します。これは、肝静脈からの血流が肺に流れないために生じることが多いといわれています。グレン手術では下半身の血流(つまり肝血流を含む)は心臓に還り、そのまま全身に流れますので、自然肝静脈血流が肺に流れる量は少なくなり(あちこちを経由して最終的にごく少量は流れる)、肺動静脈瘻が出来てしまう可能性があります。また、血流分布が極端に不均衡なフォンタン手術後にも発症する可能性あります(下半身の血流が流れない方にできる)。肺動静脈瘻は血流分布の不均衡が改善されれば(多くはフォンタン後)自然に消退すると考えられています。

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