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総肺静脈還流異常症

最終更新日:2014年12月19日

総肺静脈還流異常症に対する外科治療

総肺静脈還流異常症は左心房に還流すべき肺静脈がすべて右心房またはそのほかの体静脈系(上大静脈、下大静脈、門脈など)に還流する病気です。共通肺静脈が還流する部位によって上心臓型(1型〔無名静脈に還流;Ia、上大静脈に還流;Ib〕)、心臓型(2型〔冠状静脈洞に還流;IIa、右心房に還流;Ib〕)、下心臓型(3型)、混合型(4型)の4つに分類されます(下図)。

上心臓型Ia・Ib

上心臓型(1型):全体の約45%

無名静脈に還流するIaと上大静脈(まれに奇静脈)に還流するIbとに分類されます。体静脈還流部で狭窄を起こすことがありますが、Ia型では、左肺動脈と左気管支の間を上行する部分で狭窄を起こすことがあります。

心臓型IIa・IIb

心臓型(2型):25%

冠状静脈洞(心臓を栄養する冠状動脈が還るところ)に開口するIIaと右心房に肺静脈が個々に直接または合流して還流するIIbとに分類されます。IIaでは冠状静脈洞開口部で狭窄を起こすことがありますが、まれに冠状静脈洞の開口部そのものが狭いことがあります。

下心臓型III

下心臓型(3型):25%

共通肺静脈から垂直静脈となって横隔膜を貫いて門脈、静脈管、肝静脈、下大静脈などに還流します。横隔膜を貫く部分と静脈管の自然閉鎖に伴う肝実質内での狭窄を生じることが多く、高率に新生児期早期の手術介入が必要となります。
混合型(4型):5%

左右上下の肺静脈が2種類以上の場所に還流する場合をいいます。
動脈管開存心房中隔欠損の他に大きな心奇形を合併しない孤立性のものは総肺静脈還流異常症全体の約1/3程度です。残りの2/3は複合型心奇形のひとつとして現れ、そのほとんどが単心室無脾症候群に合併します。ここでは孤立性の総肺静脈還流異常症を中心に説明します。
総肺静脈還流異常症は、出生後、肺血管抵抗の低下に伴い肺血流が増加して症状が顕在化し、新生児期、乳児期早期に緊急手術が必要となる比率が高い重症心疾患です。重症度と緊急度の高さは、おもに肺静脈狭窄の有無と心房間交通の程度に左右されます。また、どの病型においても、全身からと肺からのすべての血液が最終的に右心房に環流し、その一部が心房間交通を介して左心系(左心房、左心室、全身)へと流れていくことから、心房間交通が乏しい場合には左心系への流入血液が少なく、著しい肺血流の増加も伴って急速に状態が悪化し、緊急手術が必要となります。逆に心房間交通が十分大きく、肺静脈狭窄がない症例では、新生児期を過ぎてから見つかる場合もあります。いずれにせよ、確定診断後は速やかに手術を計画し、治療を行います。

総肺静脈還流異常症手術

総肺静脈還流異常症に対する治療法は基本的には外科手術以外になく、病型に応じて共通肺静脈へのさまざまな到達法が報告されています。下図に一般的な到達方法を示します。

総肺静脈還流異常症手術 説明イラスト

a)上方到達法b)右側到達法c)後方到達法

手術は体外循環を使用し、心停止下に行います。1型と3型では、左心房と共通肺静脈を吻合する術式が取られます。共通肺静脈に切開を加え、対応する左心房後壁にも切開をおいて共通肺静脈と左心房をねじれのないよう、できるだけ大きな吻合口を作製します。

経右房到達法

d)経右房到達法

冠状静脈洞に還流するIIa型に対する手術です。
右心房を開けて、冠状静脈洞と左心房の間の隔壁を共通肺静脈に向けて切り込み、全体をパッチで覆うことで共通肺静脈血流が左心房に還るようにする手術です。その他に自己組織のみで行う左房後壁転位法などもあります。

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